第47話 焦りと苛立ち
「あ、来た!乗って!!もう飛べるから!早く!!」
エンジンがかかったままになった染赤の隣で葵が叫んでいる。
「荷物は?」
駆け寄ったアルが尋ねる。
「もう勇護さんが全部積んだ、それより早く乗って」
葵は『緊急事態』の詳細を知っているのだろう、かなり焦ってそれだけ言うと自分は操縦席につき管制塔と連絡を取り出した。
4人が染赤に乗り込む。
「管制塔、こちらHE.染赤。いつでも飛べる!」
葵が無線機にむかい叫んだ、連絡した先から返事が返ってきた、無線から声がもれる、かなり大きな声で喋っているらしい。
「こちら管制塔!S-F.染赤、S-F.散香、共に移動終了している、ランに支障はない、飛べ!」
「了解!」
葵がスロットルを押し上げると今まで暖気されていた染赤のエンジンは一気にふきあがり染赤を前に押し出しスピードをあげる。
「テイクオフ、行ってくるわ」
「幸運を祈る。早く戻って来いよ。」
唸りをあげながら高度を上げる機体の中でかなたが4人に食事を手渡し勇護が荷物から任務地の模型を引っ張り出した。
「敵の拠点がココだ、」
勇護がヘルメットに『E』と彫られた小さな人形を3体、一回り小さい人形を1体、模型の端に無造作に放る。
「で、運の悪いことに深夜に人数が増えた。ザッと100だ、今までのと合わせると約135。人数が揃う前に落としたかったんだが……早くしないと同盟国にケンカふっかけられるんだ。」
そう言うと人形を模型の下の引き出し部分から10体取り出してまた無造作に放った。普段はひょうひょうとしている勇護の動作に苛立ちが感じられた。