第43話 時間はただ穏やかに
「厳罰コワイ厳罰コワイ…………」
そこにはハルの言葉に反応して錯乱し、丸まって震える勇護がいた。ハルとモモは何が起こったか理解できず目を丸くしている。
「はぁ…またかよ…ッセイ!!!」
その姿をみたアルはあからさまなため息の後に脚を大きく振り上げ、踵落としを見舞った。
「へぶっ!?」
勇護はアルの踵が脇腹に入り情けない声をあげて気を失った。静かになった室内に、庭で歌うようにさえずる鳥の声が響いた。
「まぁ……こんな感じだったんだ…わかった?」
「……昔勇護さんに何があったのよ…?」
「……昔勇護さんに何があったんですか……?」
2人はかなりいぶかし気な顔で当然の疑問をほぼ同時に呟いた。
「さぁねぇ、俺は知らないよ……まぁ…聞かない方がいいんじゃない?」
「聞こうとしたらこんなことになるからムリだよ、聞けない。」
「まぁいっか、皆、こんなオッサンほっといてケーキ食べよう」
「…そだね、丈夫な人だから大丈夫だよね。」
「たしかに勇護さんは丈夫そうですけど…いいんですか?」
「息は……してるね。大丈夫。先に食べてよう。話さなきゃなんないことあるし」
「そだね、3人共好きなの取んな」
薄いレースのカーテンから漏れでる暖かな光を浴びながら気絶し続ける勇護を放置して4人はケーキを食べだした。
「えぇ!!?今回のサポーターが勇護さん!?」
「そうらしいんだ、てゆうかモモ、こんなに騒いだ後でよく驚けるね?まぁ詳しくは親父が目を覚ましてから話して貰おう。」
4人の内モモは1人だけ驚いて声をあげた。ハルはサポーターについて詳しくは知らないらしい。フォークをくわえて首を傾げる。アルはというとモモの反応にも落ち着いてケーキを食べ続けていた。隣では今回のサポーターがまだ情けなく気を失って、時折悪夢をみているようなうめき声をあげている。
その後、時間は穏やかに過ぎて行った。