第40話 決意
〜客室〜
4人が客室に入って3時間、いかにもゲストルームといった感じの落ち着いた内装の部屋の中では作戦会議が開かれていた。
「よし、じゃあ動きは後で各自で確認ね。で、ハル君、今更だけど接近戦でサイレンサーつけた拳銃使うって手もあるけど……ホントにナイフでいいの?」
アルはナイフを使う事で手に強く残る『殺した』という感覚に実戦経験の少ないハルが耐える事ができるか心配して言った。それは、和秋もモモも口には出さなかったが内心、不安に思っていた事だった。
その問いにハルはアルの眼をしっかりと見て言う。
「はい、責任から逃げちゃいけませんから。それにこの血で染まった髪を切ってないのも、僕の決意です。自己満足かも知れないけど、…背負って生きようって」
アルの眼帯で隠れていない蒼い瞳に映るハルの顔には強い決意が伺えた。その決意に3人が押し黙り壁掛けの時計が秒針を動かして自己主張する音がハッキリと聞こえる静寂が続く。
その時、扉が勢いよく開き
「オッス!ウッス!お疲れさん!!食いモン買って来たから食え!!!」
場の空気に全くそぐわない大声でアルの父親こと勇護が飛び込んで来た。4人は驚いて扉の方に視線を向けた。
「………空気読めよクソ親父…」
心底嫌そうな顔をしてアルが呟くように言う。
「お、怒ってるなクソ息子よ!!そんな時は甘いモン食え!!ほら、ケーキ、紅茶もあるぞ、和むぞ!!皆適当に取って食え!!」
勇護は息子の嫌そうな顔を無視して手に持っていた大きな袋から紙の箱とペットボトルの紅茶を取り出した。
「わぁ、ありがとうございます勇護さん。僕、カップとお皿とフォーク持って来ます。」
ハルは重くなった空気が散った事を感謝して立ち上がった。
「あ…、私も行くよ、5人分は多いし場所ハッキリわかんないでしょ?」
「あ、すみません。お願いします。」
モモの声に振り返ったハルの表情はムリをした硬い笑顔だった。