第39話 南部基地〜客室へ〜
5人を乗せたジープは自身のエンジン音に負けない大声での会話を車外に撒き散らしながら基地の外れにある空港から中央近くにある大きな建物に入った、そこは本部基地の作りとはまったく違う建物だった。そっけない感じのある外見とは裏腹に、昼どきの基地内はガヤガヤと賑やかで民間空港のターミナルのような雰囲気のある内部は明るい空気で満たされている。
「ついたぞ新入り!ここが南部基地の居住区だ!!向こうの食堂で飯も食えるしそこの売店で買いモンもできる。本部より広いだろ!端に客用の部屋があっから使えよ!!後で行くから鍵は開けといてくれ!んじゃな!!」
アルの父親、勇護は部屋の鍵を開けておくように言い、答えを聞かず居住区の端を指差し自分はエレベーターに向かい大股で歩いて行った。途中何人かと言葉をかわし大笑いをしていた。
「勇護さん、相変わらず人の話聞かない人だねぇ…」
モモはアルの肩に手を置いて慰めるように言う。
「ほんっとになぁ、相変わらずうるさいし…1日だけでもどうにかならんもんかねぇ、まぁ無理だろうけど…ハハハ」
アルは諦めたように溜め息をつきながら乾いた笑い声をあげた。
「でも明るくていい人じゃないですか、それに聞いていないようで大事なコトはちゃんと聞いてます、知識も深くて好感が持てますよ。僕はアルさんが羨ましい。」
ハルが本心から言う。
「勇おじさんは優しい…それより部屋行こう。疲れた。」
和秋はそう言うと台車を押して居住区の端にある客室向かって歩く。ハルは頷いて、アルは首を傾げ、モモは微笑み、和秋の後についてゆっくりと歩いた。