第37話 空の上の作戦会議
〜上空〜
春の終わり特有の、夏の湿気を少し含んだ空気を押し退けるようにして輸送機と戦闘機の中間程の大きさの飛行機が比較的ゆっくりとした速度で飛んでいる。中では若い人間達が地図を囲んで話込んでいる。
「比較的安全で待機可能なポイントは6つ確認してるから標的の動きを見て出来るだけ接近戦で静かに―――」
「アルさん、接近戦苦手なんじゃなかったんですか?3人ぐらいなら僕だけでも…それに―――」
「ツーマンセルは基本、それにアルは意外と動ける、けど標的の動きにあわせるより誘導して――――」
「ダメだよ、もし誘導中に仲間に連絡されたら状況が悪くなる」
「私チャフグレネード持ってるよ?」
「爆発音はどのくらいですか?」
「水中で弱めの手榴弾が爆発したぐらいかな?」
「作戦会議中失礼、こちら仲間外れの機長、当機は後5分程でWPM南部基地に着陸予定です。WPMと敵対してる国の領空とか色々考えて飛ばしたから遠回りだったしお姉さんとっても疲れました。ですので着陸の際は雑になって多少揺れるかもしれませんが気にするな、」
今まで黙って染赤を操縦していたアオが少し険を含んだ物言いで話に入って来た。
「了解、けど安全運転で頼むよ。アオちゃん」
本部の空港を出発して8時間、その間1人で飛行機を操縦するのはやはり疲れるのだろう、喉元についている無線機を使って
「乗客」に話しかける
「機長」の声色は本当に疲れていた。
「分かってる、シートベルトしっかりしめて衝撃にそなえて、元々得意じゃないから酷いかもしんない」
「了解、任務の前に死んだら洒落にもならないしね」
「任務で死んでも洒落になりませんって…」
アルの軽口にハルが適切につっこむ。
「いつまでもバカなコト言ってると僕みたいになるよ、」
和秋が舌を出す。少し血がにじんでいた。
「それはイヤだなぁ、よし、作戦は南部基地についてから煮詰めよう。今はアオちゃんの集中力をそがないように静かにしてようね。」
「許可も出たから今から降りるよ、もう1度シートベルトの確認して、あと荷物は抱えてて。」
葵がそう告げた数秒後に『染赤』はゆっくりと高度を下げ、平原の中に1つだけある大きな建物へと向かい、滑らかに降りて行った。