第34話 待ちくたびれたよ
〜1番倉庫〜
8つある倉庫の中で1つだけシャッターが開いた倉庫、その中には輸送機とも戦闘機ともつかないつかない中途半端な大きさのあるプロペラタイプの、空色の飛行機が収納されていて、その横では工具箱を椅子変わりにして座っている女性がいた。
「お待ちしておりました。来る途中に敵と遭遇したのかと思いましたよ。手伝ってくれた整備士の皆様は別の機体のトコに行っちゃったしさぁ、荷物も積み終わったし、暇だったんだよ?」
倉庫の前に立った4人を見て立ち上がり爽やかな笑顔で揶揄をしながら爽やかに嫌味を言う女性。
名前は橘葵。WPMでパイロットをしている。スタイルが良く知識が豊富でWPMの中では歳下だけではなく一部の歳上からも姉のように慕われている。
「話相手って言ったら『染赤』ぐらいだし、本ッ!当!に!!寂しかったなぁ……無機物に話しかける女の気持ち、わかる?」
そう言いながら飛行機の胴体部分を軽くパンパンと叩く。
「ごめんアオちゃん、でもこれでも急いで来たんだよ?なんせ急な任務だったからさぁ…」
近づきながらアルが弁解をする。
「あら、急な任務に間に合うように染赤を整備するのは楽じゃなかったような気がするんだけどなぁ…そこんトコどう思う?」
最初は少し不機嫌だったが会話をしている内に4人を困らせる事が楽しくなってきたらしく、正論を言いながら相手がどうでるかニヤニヤしながら待っている。
「すみません葵さん。コレを僕が受け取りに行くために玄慈さんの所によって貰ったんです。」
ハルは腰に巻いているポーチの中で唯一横向きで一番細長いものから50cmほどの日本刀のような刀を取り出しながら葵に近付き、言った。
「………ねぇ、もしかして君がハル君?」
今までアルの目を見て喋っていた葵がハルに顔を向けて聞く。
「はい、はじめまして。葵さん。」
「…………」
葵は無言で手招きをした。
「…?」
ハルは3人を振り返って見た後で不思議そうに葵に近づいた。