第27話 抹茶アイス
「おっ、やっと来たか。早くこっち来て座れ。」
藍色の作務衣に着替えた玄慈がついさっきまで油や掃除棒や工具が散らばっていた畳を綺麗に掃除さして畳の上に茶道具を広げ、あぐらをかいて手招きをしていた。
どうやら機嫌を悪くせずにすんだらしい。3人はホッとしながら畳の上に座った。
「よし、そんじゃあ今から抹茶煎れるワケだが……今日は自家製抹茶が少ねぇんだわ、あぁそんな顔すんな。まぁ落ち着け、抹茶は少ねぇがコレがある。」
抹茶が少ない、と告げられ少し不満気な顔をした2人を見た後で玄慈は振り返り小さな冷蔵庫から木の箱を取り出した。
冷やされた木箱からは冷たさを主張するような白い煙が薄く出ている。
冷蔵庫から出てきた箱をハルは『なんだろう』と言う風に、アルとモモは期待を込めて見つめた。
「ほれ、抹茶の変わりだ。」
蓋を開けられた箱からは、今まで溜め込まれていた冷気が一斉に逃げ出した。
「ぃよっしゃ!!!」
「わ、やった!!」
「わぁ、美味しそうですねぇ…」
蓋を取られた箱の中にはアイス(ジェラート?)が詰まっていた。シットリとした質感のそれは抹茶色をしてある種の貫禄のようなモノを漂わせながら箱に収まっていた。
「最近は特に暑かったからな、愛する妻が作ってくれたんだ」
自慢するように胸を張り、のろける。
「まぁとりあえずコレ食ってろ。」
涼しげな硝子の皿を冷蔵庫から、銀のスプーンを棚の引き出しから3つずつ出して3人の前に置いた。
ガンスミスの老人の家にセンスのいい食器、妙な感じがするがおそらくは彼の愛する妻の趣味なのだろう。
「ウマー!!」
「んぉいしー!」
「わぁ…美味しいですねぇ…」
冷えた皿にのったアイスをスプーンで掬って口に含み味わった後で各々感嘆の声をあげる。
「茶ぁ入ったぞ、自家製と市販の混ぜたヤツだけどな、」
アイスを食べ終えた3人の前に出された湯気の立つ湯飲みは上品な色の抹茶でみたされていた。
3人が湯飲みに手を出そうとした瞬間
「お〜い!お団子食べるぅ?食べるよねぇ?イッパイあるよぉ」
ドアが突然、勢いよく開いて女性の声が部屋に響いた。