第26話 味は茶道有段者の如く
いきなりの大声に驚き、色々な考えがハルの頭をよぎる。
「えっ!?あ、はいホントです。どうかしたんですか?……まさか玄慈さんの煎れたお茶もモモさんの作ったケーキみたいに………」
途中まで言った後に殺気に気付いたハルは急いで口をつぐんだ。
「違う違う。珍しいから驚いたん。機嫌がいい時しか煎れないんだ。味は保証するよ!かなり美味しい!!ヤバいくらい。プロの煎れたコーヒーぐらい美味しいんだよ!!?」
タイミング的にはフォローだがフォローと言うよりは素直に喜んでいる様子のアルは早く行こう。と言う風に立ち上がってソワソワしている。
「コーヒーに例えるのはわかりづらいでしょ、もっとこう……茶道の段を持ってるぐらい的な表現の方がしっくりくるんじゃない?」
殺気を感じなくなったモモがやはりはしゃいだ感じで言う。2人の反応を見るとハルも自然と期待が募る。
「うわぁ〜、すっごい楽しみです!それじゃあ早く行きましょうか!!」
「よっしゃ!じゃあ急ごう!じいちゃんの機嫌損ねたら大変だ。」
「そうだね、急ごう!!あ〜おばあちゃんお茶菓子作ってくれないかなぁ!?」
幼い子供のような期待を込めた声色でモモが言う。
「いーねぇ!!疲れてるから甘いモノ食べたいなぁ…」
「たしかアリーさんは今この家にいるはずですよ。靴が前に来た時と同じだけあったから。」
「ハルくん記憶力いいんだねぇ…あと洞察力。羨ましいな」
「ホント、記憶力いいって羨ましいなぁ…私悪いのよねぇ……」
感嘆の声をあげる2人を見ながら恥ずかしそうに頬を掻く。
「ありがと、って早く行かなくちゃ!!」
「「そうだった!!」」
3人は大した距離の無い通路を駆け足で玄慈の元へ向かった。