第24話 畳の下からコンニチワ
「アルさん、モモさん、入っていいですか?」
公園であったこと繰り返さない為に分厚い扉をノックしながらかなりの大声で尋ねる。
「………………」
しかし、繰り返し呼んでも返事が戻って来ることはなかった。少し考えた後、
「入りますよ」と言ってゆっくりと扉を開いた。
「ぐぅ」
「すぅ」
部屋に入ってすぐに、壁に設置されたスピーカーから何故か寝息が聞こえてきた。
「……マイクは…奥の部屋かな?」
独り言を呟きながら奥の部屋に進んで行った。
「あれ?」
マイクを接続する機械はあった。その機械の上には木箱が置かれていて、スイッチが押されていた。延びたコードは床に落ちてスタンドマイクは5畳の畳座敷の下に入り込んでいた。
「?」
畳座敷の下に空間があることを初めて知ったハルは身を屈めてその空間を覗き込んだ。その瞬間、左の足首と床につけていた右の手首をいきなり、かなりの力で掴まれた。
「ぅおわっ!?」
情けない声をあげながら尻餅をつき後退ろうとする。それでも足首と手首を掴む手は力を緩めずに動く事ができなかった。
「ん……ふぁー…ん?なんだコレ?」
「ッ!?イッッタイ!!痛い痛い!!ちょっ、タンマ折れる!!」
寝惚けたアルは寝起きとは思えない力でハルの足を目の位置まで持ち上げようと捻りあげた。
「…ぁあ、ハルくんか。何してんの?」
薄目を開けて尋ねる、―――手に力を込めたまま。
「早く離して下さい…」
ハルは切迫した泣きそうな声で弱々しく言った。
「なにを?……あぁ、あ〜、はぃはぃはぃはぃ、ゴメン。モモ、起きな、そして手を離そう。ハルくんが泣きそうだ」
まだ眠いのか薄い反応を示した後で隣で眠っていたモモの頬を薄い掛布団の上で繋いだ手を離してペチペチとたたいた。
「…ん?……あ、おはよう。ん?なにコレ?」
寝惚けたモモはハルの手を目の位置まで持ち上げようと捻った。
「ッ!?イッッタイ!!痛い痛い!!ちょっ、折れる!!?デジャヴ!?」
「あぁ、ハルくん?何してんの?」
「…ッ手を…離して下さいお願いします」
「あ、あ〜、ゴメンゴメン。許して」
パッと手を離して薄い反応で謝る。その後2人は畳座敷の下のスペースから這い出してきた。眠そうに頭を掻きながら畳に座った。