第22話 そんなに必要なんですか?
試射場
『銃工房』の奥の部屋にある試射場には距離を調整できる的が7つある。
隣の部屋から行きと帰りのベルトコンベアが出ていて壁には耳を保護するヘッドホンが、棚にはゴーグルが、それぞれ必要以上においてあった。
「よっしゃ、じゃあまず撃てる銃を右の台に乗せな、撃てんのは左の台だ」
テキパキと準備をする老人が3人を見ずに言った。
「あいよ、手伝うことは?」
指示される前に台に銃を置いていたアルが尋ねた。
「あー…隣から弾送って来てくれ。必要なヤツを…そうだな、一丁につき30だ。サバ読んだら撃つぞ。」
「はいはい、合計330ね。じゃ行ってくるわ」
そう言うとポケットに手を突っ込んだまま小走りで隣の部屋に入って行った。
後に残されたハルは右の台に乗せられたナイフを不思議そうに見ていた。
カシャ、ガチャ。
パン、パン、パン――
玄慈が台に置かれた銃を撃つ。撃つ度に首を少し傾げ工具を使い、ばらして整備をし、また撃つ。
右の台に乗せられた9丁の銃を撃ち終った後に
「よし、大丈夫だ。」
とだけ言って左の台に乗せた銃をばらし始めた。
ガキン!カチャ―カチャカチャ、ガチャ――
中身を確かめ必要な部品を変え油を挿し組み立てる。
バンバン、バン。
「よっしゃ!直ったぞ。後は自分で撃って確かめろや。それからモモ、エボニーとアイボリーは壊れてない。」
「やっぱね」
アルがため息をつく。
「アルさんこのナイフ?撃ってみてもいいですか?」
ハルが的を撃つ手を止めて尋ねた。
「ん?あぁ、いいよ。見本みせたげる。あとね、まだ言ってなかったけどそのナイフの名前はシードだから」
アルが隣に来た後、ハルはモモにだけ見えるようにウィンクした。
『ありがとう』
モモが声に出さずに口を動かした。
「そういやさ、あの訓練機、今日使える?」
アルが
「シード」の使い方を一通りハルに教えた後で聞いた
「あぁ悪りぃ無理だ、一昨日バラしちまったわ。それよりも陽菜、これ組むの手伝っていいか?」
さして悪いとは思っていない事が伺える声で謝った後、子供のような瞳でハルを見て期待を込めて言った。
「あ、はい。お願いします。」
ハルは玄慈の瞳の輝きに少しうろたえながらも了承した。