第21話 ゴムでも撃つこた無いでしょう。
カチャ、ギィ
「じいちゃーん、来たぞー。」
アルがヘルメットを顔の前に構えて顔だけを扉の隙間から出した。
バンバン
2発分の発砲音が響き、アルの構えたヘルメットに6発の弾丸が当たった。
「!?」
ハルは反射的に腰のホルスターに手をのばしピストルを手にとりスライドロックを外し手動で1発目を装填し、両手で構えた。
「大丈夫、あれ、やーらかいゴム弾だよ。当たるとこによったら泣くほど痛いけど。」
そう言いながらモモはハルが構えた銃を上から掴んだ。
「遅い!!」
店の奥の畳座敷から迷彩柄のタンクトップに黒いジーンズ姿の老人が叫んだ。
老人の名前は笹倉玄慈。WPMの敷地内でガンスミスの仕事をしている。本部長と共にWPMを立ち上げ、要職を蹴ってガンスミスになった変わり者だ。
玄慈のしゃがれた声は老人のそれだったが長身痩躯の体には無駄な脂肪が無く、引き締まっていた。
「色々あったんだよ、てか5分じゃん、許してよ。てゆーかクイックドロウやっていいの?」
ヘルメットを顔の前からのけながらアルが聞いた。
パンッ
「痛ッ!?」
「余計な心配じゃ白髪頭」
にっ、と笑いながら老人が言った。その右手にはマグナムリボルバーの銃、左手には全体的にほっそりとした銃が握られていた。
「いったー!!痛いよマジで!なんでじいちゃんがリボルバー以外の銃持ってんのさ!?」
左手を出しながらアルが老人に近づいた。
「それがなぁ…我が愛する妻とちょいとケンカしちまってな…。でだ、アイツの作図した通りに作ってみたらこれがまたどうだ、いい銃だ!いやーリボルバーだけが銃じゃないな。」
「何を今更。俺の銃、全部じいちゃんが作ったくせに。それにばあちゃんの設計ならいい銃とか当たり前じゃん。」
「そりゃそうか!因みにお前の銃は嫌々だ。」
アルが出した左手に当然のように銃を渡す。
「おーい、終った?」
開ききった扉をノックしながら2人が部屋に入った。
「おぉ、百恵に陽菜も一緒か。じゃあまず試射場に行くか?」
そう言うと腰に工具が収納された袋を巻き付けた。
「「『まずお茶飲もう』って言っても無駄なんでしょ?」」
アルとモモが同時に言った。言った後にハルを除く3人が笑ったところを見るとお決まりのジョークらしい。1人取り残された感のあるハルが悔しそうに
「次こそは…!」
と呟いた。