第15話 白衣の悪魔〜脱出〜アルの部屋
薬とアルコールと煙草の臭いがする医務室の中に4人。
静かに泣いている少年が1人と布団にくるまって震える青年が1人、楽しそうに笑っている女性が1人、その女性を不機嫌そうな顔で半ば睨む様に見ている少女が1人。
「とりあえずコレ飲んどいて。」
渚がハルに錠剤の瓶と水の入ったペットボトルを投げ渡した。
「なんの薬ですか?」
泣きながらもしっかりと薬を受け取ったハルがまた不安そうに聞く。
「さぁ?なんの薬だろね?けど早く飲まないとヤバいかもよ?まぁ今回のコレはどんな被害が出るかまだわかってないからとりあえず前に作ったヤツだけど、前はたしか……軽い幻聴だったっけ…?後は吐き気か、吐いた人はいなかったけどね。医者の私に言わせれば吐き気があるのに吐かないって逆に怖いよね。」
ケーキを見ながらヘラヘラと言った女性はまだ楽しそうに笑っていた……。
〜夜〜アルの部屋(1LDK)
「まだ気分悪い?」
傷や病を癒すための部屋での恐怖体験の後遺症を心配するアル
「ありがと、だいぶマシになりました。」
ハルは先輩にあたるアルの気遣いに感謝しつつテーブルに置かれたコーヒーを少しすすった。
「うん、よかった。また食堂のおばちゃんにもうモモには厨房を貸さん用に言いに行かなきゃなぁ…死人がでる前に……」
冗談になってない冗談に自分で苦笑いしつつ3杯目のコーヒーを自分のカップに注いだ。
「モモさんの部屋ってキッチン無いんですか?」
「おっちゃんが使用禁止にしてる。ちょっと前にえらい事になってね……。」
眉間をおさえてうつむくアルの顔は微妙に青白かった…。