第11話 移動〜医務室
短く言葉を交わすとアルはハルを背負った。そして下を向いて泣いている少女を
「よっ…ッと」
「ひゃ!?」
優しく抱きかかえた。
「え?アル?私は、え?」
完全に混乱した少女にアルは
「女性が泣いている時は紳士的に、優しく。これ常識。」
何故か片言で言った。
「ふぃ〜、重かった。おっちゃんの部屋から医務室ってこんなに離れてたんだね。」
背中のアルはまだうなされていた。
「ついたんですか?………ていうか重いって…酷くないですか…?」
医務室の前で青年に抱えられていた少女が言った。
青年に抱きかかえられている状況が恥ずかしいのか顔を手で覆っている。
今までと違い何故か敬語だった。
「あぁごめん、多分、任務地からバイクで帰って来てすぐに絞めあげられたから重く感じたんだよ。」
青年は笑いながら皮肉っぽく言った。
「………ごめん。」
「アハハ、冗談だよ。さて早く治療済ませて書きたくもない報告書を書い寝るか!!」
「…ごめん。」
「冗談だって、多かれ少なかれどうせ書くんだし。よっ…と」
アルは行儀悪く足で医務室の扉を押し開けて中に入った。
「あらあらあら、若いっていいわねぇ〜、任務から戻って来てすぐ彼女を抱っこして医務室までベッド借りに来るなんて〜。」
白衣を来て椅子にダラッと座って眠そうに煙草を吸っている女性がいた。歳は20代後半ぐらいに見える。隣には大きな止まり木があった。
「な〜に言っちゃってんのさ姐さん。ほれ、背中見てみ背中。」
そういうとアルは振り返った。