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タンパク質

え?ニ、三日?言ってない……いえ、言いましたごめんなさい

晴れ。学校。昼休み。屋上。俺と結城。つまり、いつも通りのお昼ご飯。俺は購買のパンで、結城はお弁当。

 お互いに口数は少ないけど、穏やかでのんびりとした時間が流れている。しかし、時計を確認すると体感の倍以上の時間が経っているという不思議。

 

 「ごちそうさまでした」


 いつもの事だけど、知らないうちに結城はお弁当を食べ終えている。食べている気配を感じさせる事無く食べ終えている。気づかぬうちに片づけまで終えている場合もある。

 そして今、可愛らしい花柄デザインのお弁当箱が結城の手によって風呂敷に包まれようとしている。心なしか、その動作がいそいそとお弁当を片付けているように見えた。


 「結城って、お弁当は自分で作ってるの?」


 結城の肩が跳ねた。そのまま固まり、答えはおろか呼吸の音さえ聞こえない。


 「え?……死んだ?」

 「簡単に殺すなよ」

 「おお、跳ねたと思ったら急に静かになったから死んだものかと。……それで、もしかして俺、地雷踏んだ?」

 「地雷って何だよ……」


 歯切れが悪い上にテンションが低い。結城の地雷で間違いなさそうだ。


 「なんか……ごめん」

 「うざいからいきなり謝るな」

 「いや、触れちゃいけない所だったみたいで……ホント、申し訳ない」

 「だからうぜぇって!!謝るな!!うぜぇ!!」


 ヤバイ、ウザイウザイ言われてる。いや、ウザイウザイ言われるのはいつもの事だけど、毎日言われてるけど、でも声を荒上げるのは珍しい。っていうかめちゃくちゃ怒ってる。……いや?その割には顔が怒っていないような?

 …………もう一押し?


 「そ、そんなに怒るとは思ってなかったから。ごめんなさい」

 「だからお前はウザイと何度言えば分かるんだウザイ男だなウザイ!!」


 もう語尾みたいになってる。


 「それにな!!別に地雷でもなんでもねーよ!!お弁当だろ!?これはな!!……これはな……」

 「そのお弁当は?」

 「わ……私が……」

 「結城が?」

 「つっ……つく」

 「結城が作ったと。なるほど、前からおいしそうだと思ってたんだよね」


 なるほどね。そういえば結城って自分の性格の特異さにはある程度自覚があるんだよね。まぁ、治そうとはしないんだけどさ。それでも、それ故に、女の子っぽい女子女子したのがわりかし苦手だという弱点を持つ。苦手というだけで、嫌いではないのがポイントです。

 可愛い柄のお弁当箱、それに加えて手作り。男でも料理する現代ではあるけども……それでも女の子っぽいっちゃ女の子っぽいよね。

 と、自己完結及び自己解説をしていたんですが……


 「……。」

 「えと、結城?」


 結城さんが物凄く睨んでらっしゃいます。


 「お前、そこに直れ」

 「斬首しそうな勢いですね」

 「いいから」


 言われたとおりに正座をする。視線は俯かせる。顔が怖いので。


 「今のくだり……分かっててやったな?」

 「いや、お弁当がおいそうだったので、その話がしたいなと」

 「分かっててやったな?」

 「…………途中から」

 「そうか……」


 殺るきスイッチの……入った音がした。


 「ちょ!ちょっと待って!!いや本当に本音を言いますと手作りお弁当が食べてみたかっただけであって!!ちょっと話のきっかけで言ってみただけであって別にからかおうとか他意はなく!!本当にお弁当がおいしそうだったので!!そして最近恋人らしいイベントが何も無かったとか色々ありまして!!」


 キーンコーンカーンコーン、と。丁度いいタイミングで、今も昔も大体変わらない学校のチャイムが鳴った。昼休みの終わりを告げる予鈴だ。そしてこれが、お弁当の話の終わりでもあった。

 俺の懇願が効いたのかチャイムが原因か、結城の殺意はみるみる治まってゆき、険しかった表情もいつもの物憂げな顔……からちょっと疲れた顔になった。


 「はぁ~。……なんかだるくなった。っていうかなんで私こんなムキになってたんだ?たかがお弁当の事なのに」

 「ま、まぁそんな時もあるよ」


 やっぱり睨まれた。


____________________________________________________________


 余談。次の日のこと。

 昨日とあまり変わらない、いつも通りのお昼休み。「あまり」変わらないお昼休みだ。つまり、昨日と違う事が大きく二つある。一つは、結城が俺にパンを買いに行く暇を与えずに屋上に引っ張り出してきた事。もう一つは、結城が重箱のようなもの、いや、重箱を持ってきているという事。

 この時点で察しは付いているんだけど、何というか……もの凄く嬉しい。


 「ほら、手作り弁当。食べたかったんだろう?」


 そう言って重箱を手渡してくる結城。そこに照れ等の感情が含まれているようには見えない。つまり「べ、別にアンタのために作ったんじゃないんだからね!?」という理由でお弁当を作ってくれたわけではない。重箱にして、昨日の俺の言葉を言質にとって無理やりにでも全部食べさせるという、結城の仕返し。だと思う。まぁ、考えが甘いですがね。

 俺が結城の手料理を残すとでも?ありえない!涼しい顔して完食してみせる!!

 意気込み新たに、結城の重箱を受け取る。

 風呂敷を解いてみると、お箸と牛乳もついていた。……うん。確かに牛乳大好きって前に言ったけど……ご飯との食べ合わせはどうかな……。


 「いただきます」

 「どうぞ」


 蓋を開けた。


 「……。」

 「……。」


 意趣返しの意味があっても、やっぱり俺の反応は気になる様子の結城。だけど、俺は何も言わずに次の箱に取り掛かった。そして次も何も言わなかった。ちなみに四段目は大量のご飯だった。

 うん。他の三段もおいしそうなんだけど……その……。鶏肉牛肉魚肉、野菜も入っているけど、如何せんたんぱく質が多い。全体的に多い。骨粗しょう症にでもしたいのかというほどたんぱく質豊富な重箱だ。

 無言不動を貫いていると結城がボソっと言った。


 「淡白で悪かったな」


 それは重箱と結城、どっちが?とは、聞かなかった。

分かりにくかったかな?急ぎ足で書いたもんですから言い訳ですごめんなさい。

二回も謝るというね

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