Difficult①
お手柔らかに。意見はどしどしまっとります
「生きるって、難しいね」
学校の屋上でお昼休み。空を見ながらぽつりと呟くと、隣でお弁当を食べていた結城が不思議そうな顔をした。確実に今、「コイツ何言ってんの?」って思ってる。
「お前何言ってんの?」
「こっちの台詞取るなよ、うざいな」
言われる前に言ってみたらうざいと言われた。恥ずかしい。
「んで?」
「いや、別に言葉以上の意味はないよ。なんか、生きるって大変だなと思っただけ」
「ふ〜ん。……空腹を感じたら食べ物を食べましょう。尿意・便意を感じたらトイレに行きましょう。眠たくなったら寝ましょう。適度に体を動かしましょう。以上」
「えっと……生き方?」
「そう。難しいところあるか?一つ一つレクチャーしとく?」
まるで小さい子供に言い聞かせるような口調に、若干腹が立った。ので、ちょっと逆らってみる。
「いや、でもさ。人生、それだけじゃないでしょ?」
「それだけだよ。生きるだけならそれだけでいい」
「そうだけど……文化的な生活を送ろうと思えば他にも色々必要じゃない?」
「金があれば事足りるだろ?金が欲しければ仕事をすればいい。仕事が欲しければ勉強すればいい。要は必要な事をその都度その都度めんどがらずにやるだけ。他に質問は?」
「アリマセン」
会話が切れてしまった。というか勝ち目がなさすぎて逃げてしまった。……正直勝ち目がない事は分かっていたけど、一矢も報いられなかったのが残念だ。
その後新しい会話もなく、黙々とお弁当を食べる。
お弁当の残りが僅かになったとき、先にごちそうさまを済ませた結城が、
「……何お前、悩みでも抱えてんの?」
ちょっと遠慮気味に聞いてきたので、
「口内炎のせいでご飯が食べにくい」
「……。」
すっごい睨まれた。
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「人生って難しいね」
同日。もうすっかり暗くなった帰り道。なんとなく思った事を呟いたら、隣を歩いていた結城に嫌そうな顔をされた。絶対今、「またかよ」って思ってる。
「またです」
「言う前に答えるなよ、うざいな」
先に答えたらうざいと言われてしまった。はずかしい。
「ふぅ。……難しいってどのへんが?」
「面倒がりながらも話に乗ってくれる結城の性格とか」
「うぜぇ」
切り捨てられた。
「ん〜そうだね〜。……人間関係とか?」
「会ったら挨拶。感謝したかったらありがとう。なんかやらかしたらごめんなさい。奇人・変人・嫌なやつは無視」
「さすがに大雑把過ぎない?」
「要するに素直になれないやつが多いんだよ」
「……結城がそれを言う?」
「……。」
すっごい睨まれた。