犬だけが視えていたモノ…
中学生の時の実話体験をまとめました。
祖母のお葬式の時に姉たちと留守番をしていた時のお話です。
私と姉二人と、コリー犬アラン。
この留守番の最中に起こった不思議なことは。
私の半生も含め全て実話です。
お読み頂けたら幸いです。
それは中学生の頃、
受験を控えた私は母方の祖母のお葬式に出ることはなく留守番をしていた。
私は北海道に住んでおり、母方の祖父母は岩手県に拠点を置き、祖父は歯科医として手広く開業していた。
祖母が亡くなる前には、ゆっくりお見舞いに行くことは出来た。
秋の寒い日だった。
「みさちゃん、ごめんね。
桃のジュースありがとう。
おじいちゃんのこと許してあげてね。」
祖母は、入院先の病室で気管切開して、筆談でそんなことを私に言ったのを覚えている。
そんなこと言われても、なんの感情も湧かなかった。
当時の私は祖父母に対して良い感情は持てなかった。
桃のネクターを、寒い中探し回った自販機で買い、季節外れの桃が食べたい、
そんなことを言う祖母にジュースで我慢してねと、
飲ませた。
「あんた機転が利くわね!」叔母や母が言う。
思春期の私にとって、祖父の思い出は最悪だ。
祖父は私にだけは冷たかった。
母方の親戚は歯医者や医者が多く、
叔母夫婦も歯医者で、従姉妹は私と同い年で何か親同士競っていたのか分からないが、そこには見えない冷たい壁があった。
私の父が母よりも11歳も年下で、
母は3人の連れ子での再婚。前夫は医者で内科医だ。父はと言うと平凡な建築屋を経営していた。
祖父は私が産まれることは望んでなかったのかもしれない、
連れ子の孫を大事にして欲しいし、実の娘が産まれて、私は叔母夫婦や他の従姉妹の中で偏差値が高かったのも、嫌味に取られたようだ。医者の娘や息子より建築屋の娘が頭がいいとくれば、さぞかし可愛げがなく見えたのだろう。
そう言う大人の事情が、わかってくる年頃だった。
大人の顔色を伺うことにも慣れていた。
従姉妹たちの仲も、私だけが冷遇されているとは感じていたし、子供は時に冷酷だ。近くに住んでもいないので、特に気にもしなかったが、意地悪なことを言われることも少なくなかった。
母方の祖父母にも、
父方の祖母も、父が長男で初婚なのに連れ子3人の母と結婚したので面白くは無かっと思う。
従姉妹たちからも、
父親違いの兄弟姉妹からも、
気がつくと、私は冷遇されることに慣れきっていた。
ただ、同じ年頃の従姉妹たちの中で私が一番出来がよく、内心、もっと成績が良ければ祖父や親戚連中の態度も変わるのかもしれない、そんな淡い希望が僅かにあり、成績や偏差値だけは良いとされる範囲を保っていたのかもしれない。
だが、それも気に入られなかった要素だったに過ぎなかった。
祖父は昔ながらの気質の気難しい老人だった。家柄や地位、財産の有る無しを重んじた。
そうして、祖母は祖父の目を気にしながらも私に気遣い、哀れに思っていたようだ。
祖父には何をもってしても嫌われているのだから、もう諦めていた。
祖母が亡くなったのは
白血病で、急なことだった。
冬の寒い、雪のちらつき始めた頃だ。
私は特に悲しい気持ちにもならず、葬儀には行かずに留守番をすることで、何処かほっとしていた。
祖母の顔すらうっすらとしか覚えていないほど、
気薄な気持ちしか持てず、子供ながらに自分は薄情だなと、思ったものだ。
当時の私は何処か諦めと冷めた感情の思春期を迎えた生意気な娘だったと思う。
身内が亡くなったのに、
こんなものなのか…。
と、考えながら、夜を過ごしていた。
父や母は、
お葬式の他に、祖父との話し合いやら、やれお墓はどうするとか、
何やら親族での話し合いがあるようで帰ってくる日が長引くだろうとのことだ。
私には飼い犬のコリー犬が、唯一の友達で家族だった。
優しい眼差しを私にむけてくるのが、この頃の私には救いだった。
大型犬の体重は50キロは超える程あったが、おとなしく座敷犬として屋内で飼っていた。アランが歩くと優雅で、道行く人も振り返った。私とアランはいつも一緒にいた。
大きくて、私を時々優しく包むように、時に肩を抱いて来るし、私へ愛情を惜しみ無く向けてくれた。
そんなある夜、岩手では葬式のさ中だ。師走に入り、姉たち二人も仕事は休めず、私と留守番をしていた。
というか行きたくなかったのだろう。
薬剤師も立派な仕事ではあるが、医者にならなかった姉二人は、祖父にとっては姉達も不出来な孫とされていたからだ。
姉たちがご飯の後片付けをし、
私も手伝いながら、
食後のお茶を飲んでいた。
父と母はまだ岩手で、2、3日後に帰るという電話があった。
次女の姉が湯のみにお茶を注ぐ。
その時、
キッチンの窓がコンコンと、外からノックされた。結構強めのしっかりした音だ。
「コン‼️コン‼️」「ゴン‼️」
犬は黙っていた。
不審な音なら犬が吠えるはずで、我が家は二階屋である。
大型犬を父が私に与えてくれたのは、番犬としてでもあり、何処か寂しそうにぽつんとしている末っ子の私への最高のプレゼントだった。
なにか、ものでも風で飛んできたのだろうかと、話していた時、
注いでいたお茶が、湯のみから
噴水のように姉にかかった。
少し熱かったが、火傷するほどでは無い。
「なに?
何したの?お姉ちゃん。」
私が思わず次女の姉に問い、
急須を持った次女の姉は固まって呆然としている。抹茶入り玄米茶の濃いのがこぼれていた。
もうひとりの長女の姉も呆然としていた。
「お茶…がね、勝手に私に向かって、噴水みたく飛んだのよ…、何故かしら…変よ…ね?」
犬のアランは相変わらず、窓の方を向きながらも、吠えはしない。
家の中を見回して、相変わらずおとなしく黙ったままだ。
アランの様子が何だか恐ろしいものではないという安心をくれた。
「おばあちゃん、お茶、お煎茶の温かいの飲みたかったのかもね、
あの病人がのむやつ?あれじゃ冷めたのしか飲めないしさ!」
私がそう言うと、
「そ、そうよね、
お葬式の、最中だものね、
私達行かなかったから、様子を見に来てくれたのかもね。」
そう話を、無理矢理こじつけ、忘れたいがために私たちはお風呂に入ることにした。
次女の姉、長女の姉、私の順だ。
姉が風呂場のドアから、
「みさ!イタズラしないで!」
と怒っていた。
私は居間で漫画を読みながら犬の頭を撫でていた。
「え?みさはなんにもしてないわよ。」
長女の姉がキッチンのテーブルから言う。
キッチンの向こうが居間で、ソファーに犬と座り漫画を読んでいたのだ。
「そ、そうなの?
さっきから誰かノックするんだもの!」
それから、長女がお風呂に入った。
「やめてよ!2人とも!
ノックして!ふざけないで!」
私は先程と同じく漫画を読みながら犬をかたわらにソファーに居る。
次女の姉はキッチンで冷たい麦茶を飲んでいた。
「ほら、
なんかおかしいのよ!
怖いわよ!」
姉たちが騒いでいた。
でも犬のアランは落ち着いて目を細めてくつろいでいる。
「大丈夫だよ。アランが吠えすらしないよ?」
今度は私がお風呂に。
アランは風呂場の前で私を待っている。私を守っているかのようにいつもそばに居てくれた。
身体や髪を洗い、シャワーを浴びたり湯船に浸かったり…。
そうするとコンコン‼️ゴン‼️
と、結構強めのノック。
明らかに姉達ではない。
アランは吠えない。
ああ、これか。このノックの音か。
何処か私は冷静だった。
風呂場の外でアランが待っているという安心感もあった。
…そうなの。
お風呂も入れなかったから?
《おばあちゃんでしょ?》
心の中で話していた。
もちろん一方的で返事などない。
あのさ、熱いお茶が飲みたいとか、お風呂に入りたいのか知らないけど、おばあちゃん、都合良すぎない?
心配するなら、冷たくされてる時に私のことを庇ってくれても良かったのに…。
私はネクター探して寒い中買ってきてあげたわよ!
そんなことを考え話しながら
少しイライラして風呂を出た。
そのとき、線香の匂いと、何とも言えない祖母の匂い袋の香りがした。
普通は石鹸や自らのシャンプーの匂いがするはずだ。
犬のアランは私を見ていた。
そして目線を横に向けて、ジィーっと空を見ていた。
なんだ?
ここに?近くに?横に?
来ているのか!
私には視えないが、気配は何となくわかった。匂いがする。
これ伽羅とかいうやつだ。
おばあちゃん、私に謝ってたり、やたらと心配してたからってね、
そんなことしても、お姉ちゃん達みたいに驚かないから‼️
無駄‼️
だって私あなたがたのこと嫌いだったもの。
私はひねくれた感情をむき出しにしていたと思う。
-偉いねアラン
おばあちゃんに吠えなかったんだ…。-
-うん、だって僕が吠えたらびっくりするよ?-
そんな目でものをいうような、
多分、犬はそんなことを私に伝えたと思う。
姉たちがキッチンで待ち構えて、
「みさ!ノックされたでしょ?」
「うん、した。
結構強めのやつ。」
匂いのことは黙っていた。
大騒ぎすると思ったからだ。
「ほら!」
「私も!」
「でもアランが、黙っていたし…
変なことじゃないんだよ。
ほら、死んでからも何日間は
身内とかの周りにいるとか言うじゃん、何日間だっけ?
おばあちゃんでしょ、
明らかに…。」
「あんたよく怖くないわね!
さっきのお茶といい、変なことだらけよ‼️」
「だってアランも、吠えな…」
「犬が吠えなくても、怖いじゃないの‼️何呑気なこと言ってるのよ‼️」
私の言葉を遮って次女の姉が言う。
なんで私が怒鳴られるんだ?
姉達はそんな時にいつも私に文句を言ったり冷たくなる。
慣れっこだ。
そうしたら、今まで吠えなかったアランが
《ワン、ウォン!ウォン!ウォン‼️》
と、次女の姉に向かって大きく吠え
私を虐めるな‼️と言わんばかりに…。
「アラン、ありがとう!
ふふ、おばけよりお姉ちゃんが、怖いってさ!」
と冗談を言った。
そんな夜があったのを、
思い出した。
無駄に吠える犬ではなかったし、
あの時は胸がすっとした。
私に当たりが強かったのはいつも次女の姉で、そのせいで時折、幼い頃から泣いていたのをアランは知っている。
もしかしたらアランは祖母に、私が虐められてるよとでも言いつけてくれたのかもしれない。
お茶がかかった服はシミになり、次女の姉はさらに機嫌が悪かったのだ。
そして、私の霊体験なるものが、はっきりと身に起こる様になり、不思議なことはこの時から加速するようになった。
終
本当に怖いのは誰だったのか、
飼い犬のアラン知っていたのです。
私にとって嫌なモノは…私にとって害をなすモノは…
さて、それはなんだったのか…。




