表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

再び

「…なぁ、本当にこんなの着るの?」


「何をおっしゃいます!アブソリュート様の晴れ舞台ですよ、これくらいは当たり前です。」


俺は今、女の子の人形遊びに使われる人形のような気分に浸っていた。

次から次へと着させられていく洋服たちは皆目も当てられぬくらいきらびやかなもので、恥ずかしくて仕方がない。


…首元、開きすぎじゃない?


「あぁ、アブソリュート様ったら背が小さいから合うものが限られてくるのよね。」


「シークレット・ブーツが必要じゃない?」


「ダメよそれは!胴と足の長さが合わないわ。」



…なにげ失礼だし。



この真夏に何重にも重ねられた洋服を着た俺は、かなり暑い。一枚一枚は薄くなっているものの、こうも重ねられれば塵も積もれば山となるんだな。


もう何時間もこうして好き勝手にされて、最初は抵抗したものの、こういう熱の入ってしまったご婦人たちには通用しない。

ただされるがまま、人形になるしかないのだ。



「あの~…俺、こんなカボチャみたいなパンツ嫌だよ。」


だが始終黙って好き勝手にされているわけにもいかないことになってきた。


肩から流れる裾に被さり、腰から太股を覆うのはどこぞの王子様の定番スタイルだ。

青の生地にはっきりとした銀色の縦縞が眩しい。


「そうですか?とても可愛らしくてよ、アブソリュート様。お似合いなのに…」



「いや、でもさ…別に内輪だけの顔合わせなんだしこんな仰々しくなくてもいいような…」


「ダメです!女性とのデートは第一印象が大切なんですから。」


「だからただの顔合わせ…」



はぁ。

何を言っても彼女たちは俺にこのカボチャのパンツをはかせたいらしい。


しゃべりながらもトンボの羽のようにテキパキと動く彼女たちの腕は、最早誰にも止められない。


「後でクロードに違う服を選んでもらおう…」








結局、クロードに爆笑されながらも普通の濃紺の正装着に着替えた。

途中テキパキご婦人たちに見つかり、首元の白いスカーフとあってもなくても意味のない長ったらしいマントを着させられたが、先程のなんちゃってお伽話の国の王子様よりマシである。


シークレットブーツではなくいたって普通の慣れない黒革のブーツをはいた俺は、再びいつぞやの扉の前に立っている。

一ヶ月も経たないうちにこの扉の前に立つなんて初めてだ。


どんどんと暗くなる気持ちを、なんとか奮い立たせなければ。


「南国の女性の話を?」


俺の様子を少し離れたところで見ていたクロードが、今日は天気がいいですね、というような軽さで話しかけてきた。


見た目は俺より少しだけ年上なだけなのに、こういうところが大人だよな。

俺はいつもお前のそういうところに感謝してるよ。


「これから俺の奥さんに会うのに、それは失礼だろ?」


「余計なお世話でしたね、失礼致しました。」



ぐずっていた足をようやく動かし、金色に彩られた扉を潜った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ