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屋上から飛び降りた幼馴染によく似た後輩が、僕の家の転がり込んできた〜自殺に至る、四つめの理由〜  作者: 秋夜紙魚


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第15話

side 黒澤ユキ


 夜明け前にホテルを出て、いったん家に戻った。


 なるべく音を立てずに鍵を回す。

 テレビも話し声もない。みんな寝ている。


 キッチンの冷蔵庫に、俺の夕飯がラップされて残っていた。

 炒飯。深めの皿に盛られている。


 電子レンジは使わない。

 静かな家で響くのは、食器の触れる音と、俺の咀嚼だけだった。


 食べ終えると、そのままバイトへ向かった。

 今日は朝一のシフトだ。早く着くぶんは文句を言われない。


「やあ、黒澤君。おはよう」

「おはようございます」


 店に着くと、店長がもう掃除をしていた。

 挨拶だけして、裏の休息室へ回る。


 奥の更衣室で着替える。

 終わったら、時間まで椅子に座ってぼんやりする。いつもの流れ。


 そこで、リズムのある電子音が鳴った。

 着信。家からだ。


 少し迷って、出る。


『今、大丈夫?』


 声の主は、今朝ソファで寝顔だけ見てきた、あの人だった。

 「リビングで寝るな」と言いかけて、やめる。俺も今朝はソファで寝た。


『その、元気?』

「まあ、そこそこ」


 同じ家に住んでるのに、会話が他人みたいだ。

 まともに顔を合わせたのが、いつだったかも思い出せない。


『たまには早く帰ってくれば? ……お祖母ちゃんも、そっちの分もご飯用意してるよ』


 優しい誘い。

 そのぶん、胸が痛む。


 分かってる。

 それが、心からの言葉じゃないことも。


「悪い。シフトの都合でさ。毎日ありがとうって、伝えといてくれる?」

『うん』


 ここが、俺と彼女の距離だ。

 近づけないし、近づかれたくもない。


「……」

『……』


 しばらく、無言が続く。

 切ったのは俺だった。


「じゃ、バイトだから」

『うん』


 本当は、まだ時間はあった。

 でも、続けても言葉は出ない。


 電源ボタンも、俺が押した。

 彼女は、自分からは切れないって、俺は知ってる。


 携帯を畳んで、壁にもたれる。

 息を吐くと、身体が少し軽くなった気がした。


 ――愛そうと決めた、唯一の肉親だ。

 あの事件のあと、泣き崩れていた姿が、頭から離れない。


 また、着信音。


 今度は学校。

 画面を見ただけで、相手が分かって憂鬱になる。


「はい」

『進路指導の月島だ』


 いつも通り、声が硬い。


『処分は見送りだ』


 疑いは晴れた、ってことらしい。

 続けて、二度と疑われるようなことはするな、と言われた。


『それと今日、もう一度学校に来い』


 言い終えると、月島は一方的に切った。

 反論する暇もない。


 舌打ちが出た。


「すみません、店長」

「いやいや、仕方ないよ。学業優先。どうせ客はそんなに来ない。今日も、マドカに頼んでみるよ」


 笑って許された。

 昨日も代わりに出てくれたらしい。――今度、礼をしないとな。


**************************************


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