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Huma Gear  作者: 近藤海月


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9/10

対特

9話です。

ほわ~。

「昨日の記者会見での官房長官の発表を受け、ヒューマ騒動の混乱から、早くも二日が経ちました」

「各地で発生しているヒューマ犯罪は、現在鎮圧されつつある模様です」

「ここで、本日正午に行われた官房長官の記者会見の一部映像をご覧ください」


ーー

「国民の皆様、本日はお時間をいただきありがとうございます」

「先般発表いたしましたヒューマ能力に関する政府方針について、続報をご説明いたします」

「まず、改めて申し上げます。

ヒューマ能力は極めて危険性の高い現象です。

制御を欠いた場合、公共の安全に重大な影響を及ぼします」


「しかしながら――」

「ヒューマ能力保持者は、同時に我々と同じ“人間”です。

政府はこれを理由に、排除を目的とした施策を行うことはありません」

「我々が進めるのは、排除ではなく“管理”です」

「管理とは抑圧ではない。

秩序の維持であり、安寧の確保です」

「自由は尊重されるべき価値です。

しかし、無秩序の上に成り立つ自由は、結果として多数の不自由を生みます」


「ゆえに現在、政府は『対ヒューマ特別部隊』――通称『対特』(たいとく)を正式に運用開始いたしました」

「本部隊はヒューマ能力に精通した人材を中核とし、迅速な現場対応と事態収束を目的としています」

「先日、祭角地区ショッピングモールにおいて発生したヒューマ犯罪事案は、本部隊により制圧されました」

「現場指揮を執ったのは副官・角谷かどやです」

「既に複数の案件において成果を上げており、拘束、保護、及び専門機関への移送体制も整備されています」


「繰り返しますが、これは弾圧ではありません」

「社会は変化しています。

その変化に対し、国家が責任を持って対応する。それだけのことです」

「今は、自由の拡張よりも秩序の確立を優先すべき段階にあります」

「少数の負担によって多数の生活が守られるのであれば、政府はその責務を引き受けます」


「もし、この判断が誤りであると証明されるならば――」

「その責任は、私が負います」

「国民の皆様には、冷静な理解と協力をお願い申し上げます」

「以上です」

ーー


「ただいまの映像が、本日正午に行われた記者会見の映像です。本日は〇〇大学で社会学の講師を――」


私はそこでテレビを切った。

専門家を語る者の胡散臭い話など、聞く意味はない。

今の話に出てきたのが、先日のショッピングモールに現れた武装集団だろう。


正直に言おう。

官房長官の話は正しい。正しさの上を歩きつつ、速やかだ。

言葉の選び方も賢い。私たちのような素人が口を挟めないほどに。

だけど――

ヒューマを持つ私と、穴の向こう側の人間であるマギア。

私たちは、この社会を静観していていいのだろうか。


「カンナは今のをどう思う…」

「官房長官の話?」

「ああ」

「正しいと思うし、誰がやってもこれが最善策だとは…思う…」

「そうだな…俺の世界の人間よりかは、幾分マシだ」

「そっちの世界も、ヒューマを管理するの?」

「実際にされていた…社会システムそのものが、ヒューマを管理するための仕組みだった。有益なヒューマを持つ人間は政府に取り込まれ、有害なヒューマを持つ人間は“処分”される」


ヒューマを持った人間は、管理か処分か――

待てよ。

私も“ヒューマ”だ。

このまま社会が進めば、いずれ私は完全に管理される側になる。

指が勝手に震えている。

その時、背中に大きな手が触れた。


「大丈夫だ…カンナ。俺が必ず守ってやる…」

守る、と言ったが――

俺はあの時、理由はどうあれ奴に押されていた。

カンナを守るどころか、カンナに守られた。

俺にはやはり、大剣ぶきが必要だ。

あれさえあれば――

鍛えないといけない。もっと強くならないといけない。


俺は、まだ足りない。


「ありがとう…マギア。お陰で落ち着いたよ…」

「そうか!良かった!俺は笑顔のほうが好きだからな」


社会は急激に進んでいく。

統制された秩序は社会に安寧を与える。

だが同時に、個人を置き去りにする。

今の社会への適合は、本当に正しいのか。

私はそれを、自分の目で確かめたい。

たとえこの選択が間違っていたとしても――

この気持ちにだけは、嘘をつけない。

官房長官はいいキャラになります

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