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Huma Gear  作者: 近藤海月
『官房長官編』ーー初幕ーー

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7/12

動いた者

7話です。

よろしくです。

翌日、私とマギアは彼の服を買うために、近くのショッピングモールへと向かうことになった。おじいちゃんの服をこれ以上クロップド丈にするのは申し訳ない。

「カンナ、寄りたいところがあるんだが、いいか?」

ショッピングモールに行く前に寄りたいところがあるらしい。

「いいけど、どこに?」

「それはな、権蔵ごんぞうさんのところだ」

刀鍛冶の権蔵さん。一昨日おととい、大剣を鍛えてやると約束していた。


「おっ! お前この間の彼氏君じゃねえか! 例の件か?」

「その通りだ。これを頼みたい」

そう言うと、背中から大剣を降ろし、権蔵さんの工房の台の上に置いた。

「やっぱりな……こいつは……見たことがねえな……」

見たことがない? どういうことだ。

「こいつを構成している鉱石だ……鉄に似ているが違うな……おもしれぇ! お代は要らねえから少し貸してくれ! 必ず鍛えてやる!」

「いいのか? 無償でやってくれるならありがたいが」

「いいってことよ! 俺も色々いじくりてえから迷惑料と思ってくれ!」

「願ったりだ! 感謝する!」


店を出た時、解放されたようにマギアが言った。

「いや~背中が軽いな!」

「あれ、重そうだったもんね」

「そんなに重くはないぞ……確か、9kgぐらいか……」

いや……それは十分重いだろ……。


ショッピングモールまでの道中で、気づいたことがある。

制服を着た警備員の数が増えた気がする。

「見張りの数が増えたな……」

「うん……」

日常との違いは、目に見えて分かった。


「ここがショッピングモールか……凄く大きいな……」

ショッピングモール……祭角一丁目まつりかどいっちょうめの商店街の店が軒並み潰れた要因。素直に言うと好きにはなれない。

「そうだね……早く買うもの買って帰ろう……」

「……ん、ああ……」


マギアにはXXLサイズの服を買った。

初めて、こんなサイズの服を買っただろう。この先もきっと買うことはない。

「似合ってるんじゃない?」

「そうか? ならそうだな!」

私には正直、服のコーデとかは分からない。現に私の服もマネキンの真似だ。


そうだ……この前消費したグミの補充をしなければ。

「マギア、もう一つ寄るところあるけどいい?」

「構わない! 行こうか」

菓子コーナーでグミを取り、レジへ向かおうとした時、違和感に気づく。

人の流れが減っている。

いや、違う。

減っているのではなく――逃げている。

その時、店の奥の方から声が聞こえた。


「来るなっ……俺に近寄るじゃねえ!」

声のする方に行くと、痩せ細った男が警備員相手に暴れていた。

足下には数人倒れている。


「すぐに終わらせる! そこに居てくれ!」

気づけば、マギアは走っていた。拳が空気を押し、男をぶち抜く。

殴られた男はラックに激突した。

「……安心しろ……本気では殴っていない……」

男が立ち上がる。

「……なんなんだよ……お前は……」

「俺はマギア……」

「名前は聞いてねえよ……俺は……俺は生きる為にやってんだ! 邪魔すんな!」

男がマギアに向かっていく。

「甘いっ!」


マギアのカウンターが決まった。綺麗に鳩尾みぞおちに拳が入り込む。

血が滴り落ちる。

「ッ……!」

その血はマギアのものだった。

拳が触れた瞬間、男の腹から鉱石が“生えた”ように見えた。

「へっへへ……お前が悪いんだ……」

「ヒューマ持ちか……」

恐らくは硬化系か……いや、違う……どうする……この拳はもう使い物にならない……今は距離を取らなくては……


「……クソっ……やるなら……もう……やらねえと……お前が邪魔するから悪い!」

その時、男の体から石礫が放出された。

「……鉱石! 避けろ!」

無数に散らばる石礫は、相手を選ばない。

マギアは避けられそうだったが、倒れている警備員を庇い、複数箇所に裂傷を負った。

「やられたな……これでは……うまく動けない……」

マギアの足には大小複数の礫が刺さっていた。


「……悪いな……俺が生きる為に死んでくれよ……」

マギアが殺される……私は何もできない?

あのマギアが押されている相手に、私が勝てるわけがない。

でも――

「……悪いが……俺は死ぬわけにはいかない……やるべきことが残っている……」

男がマギアに近づく。

……嫌だ……嫌だ……

マギアを失うのは――


嫌だ!!


その時の私は何をしたのか覚えていない。考えてもいなかった。

身体が、マギアを助けたい一心で動いた。

世界が、一本の線になった。

気づいた時には、男の右腕があり得ない方向に折れ曲がっていた。


血管が焼けるように痛い。

耳鳴りがして、心臓が暴れている。

速すぎて何が起こったのか分からない。

身体が少しも動かない。


静寂を切り裂いたのは男の叫び声だった。

「なっ?……痛ええええ!!……は? なんだよ……お前もかよ……痛えよ……」

男の腕の鉱石が剥がれている。恐らく、私が壊したのだろう。

「……カンナ!」

マギアが私の方に寄ってきた。

「大丈夫か!? 無茶をするな!!」

どの口が言っているのだろうか。


しかし、状況はまだ危険だ。男はまだ動けそうだ。

私もマギアも、まともに戦える状態ではない。

「あ……」

男が何かを呟いた。

視線の先に何かがいるのか。

その時だった。

パチッ――

空気が弾けるような音がした。

凄まじい衝撃が走り、裂けた空気の振動が遅れて耳に届く。

男の右肩の鉱石が砕け散った。


「対象、制圧。やれ」

銃火器を携帯した武装集団が男を取り囲んだ。

「ひっ……やめてくれ……殺さないでくれ!」

男は身体に纏っていた鉱石を保持できないのか、外装が崩れていく。


「カンナ……動けるか……逃げるぞ……」

「ごめん……無理……」

マギアは無言で私を担ぎ上げた。

遠くで「作戦完了」の声が響く。

二人とも傷だらけだった。

嫌というほど、私は“社会の変化”をこの身で知った。

戦闘回のカロリー消費が凄い。

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