ただいま…
3話目です。
1日目に読んでくれた20人の皆さん。
2日目に読んでくれた30人の皆さん。
ありがとうございます。凄いモチベーションになってます。
帰宅するのに最も手っ取り早いのは、電車に乗ることだ。
私たちは警察のいない道を通り、駅までたどり着いた。
「……止まってる……」
落ち着いて考えれば思いつくことだった。警察がここまで動く出来事が起きたのだから、電車も止まるだろう。
「移動手段がないのか? カンナ、どうする?」
こんな状況だ。バスやタクシーも走っていないだろう。
「歩くしかないよ……」
大丈夫、そんなにも遠くない。
――訂正しよう。遠くないが、近くもない。電車で20分の距離は普通に遠い。
足の裏がじんわりと熱を持ち始めていた。
「結構歩いたな。カンナは疲れていないか?」
マギアはケロッとしていた。あと五十キロ以上は歩いても余裕そうな顔をしている。
「全然……大丈夫……」
嘘である。私は体力がある方ではない。完全に余裕なふりだ。
「そうか……無理はするなよ」
マギアは、私の歩幅に合わせて歩いてくれている。
なんだ、この男。結構優しいではないか。
それから5分ほど歩いたところで、目的地周辺に着いた。
マギアが鼻を動かし、匂いを嗅いでいる。
「木の匂い……それに鉄の匂いもするな……」
正解だ。ここら一帯は祭角一丁目といい、古くから職人の町として有名な地域である。
「そうだよ。よくわかったね」
「そうだろ! 鼻や目には自信があるんだ!」
褒めると、マギアは嬉しそうだった。
もうすぐ家だ。その時、後ろから声がかかった。
「やあ、カンナちゃん。その大っきいのは彼氏かい?」
「違うよ! ……ただの連れ! ほらっ、仕事に戻れ!」
この人は近くに住んでいる鍛冶師の権蔵さんだ。
「へいへい、分かったよ!そうだ、彼氏君! その背中に背負ってるもの、また見せに来な! 俺が鍛えてやるよ!」
「だから! 彼氏じゃないって!」
権蔵さんは昔からこうだ。何かと癖をつけて、私をからかってくる。今のも冗談か本心か分からない。
一つだけ言えることは“刀を鍛える”ことに関しては、彼に右に出る者はいない。
「今のは誰だ?」
「権蔵さんっていって……鍛冶師。……その背中の大剣も、見てもらえるんじゃない?」
するとマギアは嬉しそうに、
「そうか! では今度、見てもらおう!」
と言った。
本当に嵐のような人である。
「着いたよ」
「おお……ここがカンナのアジトだな!」
「アジトじゃない。家」
「家だと? カンナの両親は貴族や政治家なのか?」
「違うよ。おじいちゃんはただの大工」
どうしてアジトや政治家という発想になるのか。
それに、私の両親は他界しているため、おじいちゃんと二人暮らしだ。
「ただいま……」
「ただいま!!」
あんたはただいまじゃないだろ。
返事がない。おじいちゃんはいないのか。今は好都合だ。
「私は部屋の掃除をするから……マギアは風呂に入ってきて……」
「風呂?」
「知らない? ……じゃあ……お湯を浴びてきて」
「水浴びだな! そういえば最近していないな」
だからだよ。
どうせ使い方が分からないだろうと思い、一から風呂とシャンプーの使い方を教えた。
「カンナ!! お湯が管から出てきたぞ!! 凄い!!」
風呂場からそんな声が聞こえてきたが、無視をした。
「着替えはおじいちゃんの服を着て! ……聞こえてる?」
「ああ……聞こえてるぞ……それにしても風呂はいいな……」
マギアの臭い服を洗濯機に放り込み、回した。
マギアがいない間に、私は散らかっている部屋を整頓した。
少し時間ができたので、考えをまとめる。
――ヒューマについて――
これが一つ目に聞きたいことだろう。
他にも気になることはあるが、反応的に解決できそうなのはヒューマだ。
下から声がした。風呂から上がったのだろう。
「とても気持ちよかった!」
マギアの身体からは、ほくほくと湯気が立ち上っていた。
それに、少しバカになっているようにも見える。
おじいちゃんの服を着せたが、筋肉と身長のせいでTシャツがクロップド丈のようになっていた。
Tシャツが可哀想だ。
「……サイズは……問題なさそうね……私の部屋に来て。そこで話をしたい」
「了解だ」
「しかし、雨風を凌げる場所は、いいな」
「そう?」
「ああ……俺が住んでいた場所は、風を凌げず、所々で雨が漏れていた……」
そうなのか。マギアにとっては、ここは良い環境なのだろう。
様々な想像が浮かんだが、恐らくマギアは貧困層の出なのだ。
部屋にマギアを入れたが、やはりこの男はデカい。
周囲の家具やガチャガチャのミニチュアが、やけに可愛く見える。
話を切り出したのは、私からだった。
「いきなりだけど、さっきの質問の続きを聞いていい?」
「ああ、構わない」
「じゃあ……ヒューマって何なの? 私、そんな言葉、生まれてこの方聞いたことがない」
マギアは悩みながらも、答えてくれた。
「そうか……やはり……この世界にはヒューマは存在していなかったのか……」
「うん……」
マギアは言葉を選ぶように視線を落とした。
「よしっ! ならば……初めから教えよう……ヒューマとは、ヒューマ能力と呼ばれる力だ……」
ヒューマ能力。それが、あの力の正体。
マギアは続けた。
「ヒューマ能力……正式名称は人間副次能力効果だ。
人間なら、本来は――」
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