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Huma Gear  作者: 近藤海月
『炎帝編』

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19/26

→私達は戻れない

19話です。


「おいおい、マギア。

どうした? あの炎帝に勝ったんだぜ! 喜べよ!」


勝利に酔いしれた仲間たちが寄ってくる。

すでに祝勝ムードであった。

しかし、彼の顔はどこか浮かない。


「ああ……そうだな……勝った……」


彼の返事を聞いて、お祝いムードは一転、まるでお通夜のようになってしまった。


「……よっしゃ! ノーシティに戻ろうぜ!!」


「そうだな……」


彼らはセントラルタウンから踵を返し、ノーシティへ戻った。


「なんだ……この臭いは……」


ノーシティに着くと、鼻の奥に焦げ付く臭いがした。

焼け落ちた家屋を見て、最悪の想定が頭をよぎる。


「……おい! 誰かいねえのか!」

どこからも返事が聞こえない。

「……嘘だろ……ありえねえ……」

「カン――」

「おーい! マギアに兄貴にジョセフじゃねえか!!」


カンナを呼ぼうとしたその時、奥から声がかかる。


「梅! 生きてたのか!!」

「助けてもらったからな!! 待ってろよ! 街のみんなを呼んでくる!」


梅が奥に声をかけると、ぞろぞろとノーシティの住民が集まってきた。

皆、無事のようだ。


「よく生きて帰ってきたな! 炎帝は倒せたんだろ?」

「当たり前だろ! マギアと銃のおかげだ!」

「食べ物もいくつかくすねてきたぜ」

「助かるぜ、これで屋根さえあればな!」

先ほどまでの緊張が嘘のように、和気あいあいと盛り上がっている。

しかし、そこには――


「カンナは……カンナはどうしたんだ……生きているのか!」


――カンナの姿はなかった。

俺は恐る恐る聞いた。

事実を確認するのが怖かった。

この場にいてほしかった。

周囲が黙る。


「……あのお嬢ちゃんは……その……」


「……俺たちを守って……一人で雷雲と戦ったんだ……」


「そんなことは知っている!! 無事なのか!! 生きているのか!! カンナに会わせてくれ!!」

「落ち着け! お嬢ちゃんも……お前も重傷だが、命に別状はない……」

「そうか……よかった……」

安心とともに身体が脱力する。


「落ち着いたか……ついてこい」

「……どこに……?」

「お嬢ちゃんはこっちで寝てる」

離れには傷一つない家屋が複数残っていた。

その一つに、ノーシティでは高級品の布団に包まれたカンナが寝ていた。

マギアは駆け寄る。

その目はわずかに潤んでいる。

近くで、静かに手を握る。


「よくこんな場所が残っていたな……」

ジョセフが驚く。

「このお嬢ちゃんが雷雲の攻撃を一箇所に集中させていたから……俺たちは怪我一つしていない」

「頑張ったんだな……カンナ……」

マギアはずっと彼女の手を握っていた。


周囲が宴に酔い、寝静まった頃。

「……痛っ」

意識が戻った瞬間、身体中に強烈な痛みが走る。

血管に沿って張り裂けそうだ。

横を見ると、マギアが腰掛けたまま眠っている。

守ってくれていたのだろう。

遠くではジョセフさんや松さんが雑魚寝している。

マギアたちは無事に帰ってきた。

その事実が、瞼の奥を熱くさせた。

視界が滲む。

身体が動かない。

もう寝るしかない。


翌朝――

皆、同じ時間に目を覚ましたようだ。

高級品の酒を飲み、遅くまで騒いでいたらしく、頭が痛いだの気持ち悪いだの言っている。

家屋から出ると、マギアと目が合った。


「あっ……」


「お、おはよう! カンナ! 怪我は大丈夫か?」


「おはよう、マギア……怪我は……うーん……大丈夫かな」


「そうか! それはよかった! それだけが気がかりだったからな」


「マギアも炎帝に勝ったんだね……」


「カンナもだ……雷雲を倒した」


少し沈黙が落ちる。

あんな恥ずかしい約束を思い出してしまい、気まずい。


「約束したからな! 初めての約束だ! 絶対に生きて帰る!」

「そうだね、私もマギアとの約束を守るために頑張ったから」

「俺もだ。一度は諦めかけたが……カンナとの約束を思い出して勝ったぞ」

「遠くで死なれたら困るしね」

「まったくだ……死ぬときは一緒がいいな!」


「うわっ! 奥さん! 聞いた!」

「あれってプロポーズよね!」

コソコソとふざけた声が聞こえる。

おそらくジョセフさんと梅さんだろう。

マギアの顔を見てみろ。

この純粋そうな顔を。

私も一瞬よぎった考えを反省する。


炎帝亡き後、社会集団からのノーヒューマへの差別行為は減少した。

しかし、個人の差別意識は残っている。

一概に社会が変わったとは言えない。

セントラルタウンでは後継者争いが起きたという。

謀略、陰謀、策略が混じり合い、治安は低下。

後継者には水龍の息がかかった者が就任し、大改革を行っているらしい。


今まで社会の変化は水龍と炎帝が引き起こしていた。

だが今回の変化の要因は――私たちだ。

私の「知りたい」から始まった気持ちが、不可逆な社会の変化を生んでしまった。


マギアの身体には火傷痕が残り、

私の身体には被雷時の雷撃痕が残った。

服を着れば隠せる。

だが消えない。

一生消えない代償だ。

私たちは戻れない。

この傷も、社会も、行動も。

だから、進み続けるしかない。

私が。

私とマギアが信じた道を。

タイトルは14話の『私は知りたい→』と連動しています。

『私は知りたい→私達は戻れない』

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