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Huma Gear  作者: 近藤海月
『炎帝編』

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14/21

私は知りたい→

14話です。

手が寒い。

翌日、私とマギアは対炎帝に向けて作戦会議を開いていた。

「馬鹿正直に真正面から行ったら……」

「当然、負けるな」

「そうだよね……」

この会議は朝から難航している。

そもそも、炎帝のヒューマは炎を操ることしか分かっていない。私がこの目で見たのも、マギアが体験したのも同様のものだった。


ヒューマとはそもそも何なのだろう。ゾワゾワが鍵になっているのは間違いないし、万能能力ではないはずだ。

現に、私の充電ヒューマは感電しなければ電気を貯められない。電気がない場所では貯めることもできないため、温存するしかなかった。


「何か……弱点は……」

「弱点か……それらしきものは考えられないな……」

「……それでも……絶対に突破口はあると思うんだ……」

「弱点……そうだな……思い返してみないか? あの時の敵を」

「あの時の?」

「岩纏いのことだ」


あの大男のことか……。あいつは引力を腕に発生させるヒューマ……。弱点は――。


「あいつは岩を纏うほど鈍重になっていたな!」

「そうだったね」

「カンナ、もう一度、最初から炎帝のヒューマを見たときのことを教えてほしい」

「えっ……分かった……確か……」


私はあの時のことを思い出す。炎帝の顔を、炎を、人の波を。

「駄目……何も弱点には思えない……」

「些細なことでもいいんだ……何かないか……」

もう一度、整理する。


「待ってね……風のヒューマ使いが飛ばしたものを灰にした……」

「一瞬で?」

「うん、一瞬で。それに……次の大きな炎をすぐには撃たなかった……!」

「溜めが必要なのか?」

「かもしれない……。あとは……すごく澄ました顔で……炎を撃っていた……」

「それは……関係あるのか?」

「澄ましていたというよりも……余裕がないような顔にも見えた」


「分かったことは……連射できないかもしれない、くらいか……」

「ごめん……力になれなくて……」

「いいんだ。何も知らないよりも、少し知れたほうが勝率が1%でも上がる」

「……仮にそうなら、まだいけるかもしれない」

「それに……俺には権蔵さんが作った大剣がある」

マギアのそのときの表情には、確かな希望があった。


その後、戦闘場所はセントラルタウンの中央広場付近にすることに決めた。

潜入は、私は正面から。マギアは壁を越えて上から。

私の役割は避難誘導と、その後の炎帝の能力看破の補助。

マギアは炎帝を倒すことに専念する。


そして、問題が再び浮上した。

「……雷雲やその他のヒューマ使いをどうするかだな……」

そうだった。忘れていたわけではないが、後回しにしていた。

「だよね……炎帝を相手にしながら他も相手にするのは……」

「不可能だな……」

会議が振り出しに戻ったと思ったとき、後ろから声がかかった。


「水くせえな! マギア! こんな面白い話を内緒でしてるなんてよ!」

この声は――。

「ジョセフではないか! 協力してくれるのか?」

「炎帝以外のヒューマ使いならな! 俺以外にも数人の賞金稼ぎが参加してくれる!」

「しかし、ジョセフは大丈夫なのか? 俺と同じノーヒューマだ」

「へへ……心配すんじゃねえ……俺たちにはこれがあるからな……」

男たちは徐ろに何かを取り出した。

「っ……それは……」


それは、この世界には存在しないはずのものだった。

悪魔の発明。

戦争の象徴。

銃。

マギアも同じことを考えているはずだ。

「……なぜ、それを持っているんだ……」

「こいつはな、水龍から出回ってきた禁制品さ。こいつはいいぜ。俺たちでもヒューマ使いになれる」


複雑な気持ちだった。

仲間になってくれるのは嬉しい。

しかしそれは、私の世界の悪い部分と繋がっているようにも見えた。

会議はまとまったため、一度切り上げることにした。



もう帰れないかもしれない。

だから最後に、ノーシティを見て回ることになった。

お世辞にも綺麗とは言えず、治安が良いとも言えない。

これも炎帝政治の影響だろう。


「ねえ……賞金首は誰がかけているの……」

「賞金稼ぎの稼業を取り締まっているのは……水龍だ」

「水龍は炎帝の優秀なヒューマ使いに懸賞金をかけている……岩纏いも炎帝側の一人だ」


救済のように見える制度は、誰かが一方的に得をする構造になっている。

弱者を救うように見せかけて、労せず敵の妨害をしている。

「俺たちは水龍に搾取されながら、炎帝にも弾圧されている」

「そうだったんだね……」

この街は、なるべくしてスラム街になった。

炎帝の正義と水龍の狡猾さに板挟みにされている。

この街は、誰からも選ばれていない。


その時だった。背筋が凍る。


――ドゴォオン――


近くで雷が落ちた。

「竹がやられたぞ!!」「死んでやがる!!」「炎帝の犬が近くにいるぞ!!」

悲鳴が響く。

「……勝てるわけがないんだ……」

これはまずい。一方的に殺されれば士気は下がる。


私は……なぜ街に行ったのだろう。

私は正義感で動いたわけではない。

これは個人的な知的好奇心だ。

あの街で、管理が正しいのかを見たかった。

その結果が、炎帝を倒すという選択だった。


私の“知りたい”は“知ってしまった”に変わり、


“見てみたい”は“戻れない”に変わった。


ようやく、私の中で整理がついた。


「雷雲が来てるぞ!! 逃げろ!!」

「カンナ! 入り口の方だ! 行こう!」


「カンナ……? どうした? 急がないと……」


「……マギアはジョセフさんたちと一緒に……炎帝のところに行って」

「なっ……」

「……ここは私が守る」

「今は冗談を言っている場合じゃない!」

マギアが私の両肩を掴む。


「今のが、冗談に聞こえた?」


私たちは見つめ合う。


「大丈夫……約束する……必ず勝って、生きて元の世界に帰るって」

「だから……マギアも勝って帰ってきてね」

「分かった……約束する」

マギアはジョセフたちを連れ、セントラルタウンへ走っていった。


私は雷雲の前に立つ。

すでに家屋の一部が焼けている。

「お前が? 女が俺の敵か? 舐められたもんだぜ」

「……舐めといていいよ……私は同格に見てるから……」


私の予想が正しければ――

この勝負は……。

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