私は知りたい→
14話です。
手が寒い。
翌日、私とマギアは対炎帝に向けて作戦会議を開いていた。
「馬鹿正直に真正面から行ったら……」
「当然、負けるな」
「そうだよね……」
この会議は朝から難航している。
そもそも、炎帝のヒューマは炎を操ることしか分かっていない。私がこの目で見たのも、マギアが体験したのも同様のものだった。
ヒューマとはそもそも何なのだろう。ゾワゾワが鍵になっているのは間違いないし、万能能力ではないはずだ。
現に、私の充電ヒューマは感電しなければ電気を貯められない。電気がない場所では貯めることもできないため、温存するしかなかった。
「何か……弱点は……」
「弱点か……それらしきものは考えられないな……」
「……それでも……絶対に突破口はあると思うんだ……」
「弱点……そうだな……思い返してみないか? あの時の敵を」
「あの時の?」
「岩纏いのことだ」
あの大男のことか……。あいつは引力を腕に発生させるヒューマ……。弱点は――。
「あいつは岩を纏うほど鈍重になっていたな!」
「そうだったね」
「カンナ、もう一度、最初から炎帝のヒューマを見たときのことを教えてほしい」
「えっ……分かった……確か……」
私はあの時のことを思い出す。炎帝の顔を、炎を、人の波を。
「駄目……何も弱点には思えない……」
「些細なことでもいいんだ……何かないか……」
もう一度、整理する。
「待ってね……風のヒューマ使いが飛ばしたものを灰にした……」
「一瞬で?」
「うん、一瞬で。それに……次の大きな炎をすぐには撃たなかった……!」
「溜めが必要なのか?」
「かもしれない……。あとは……すごく澄ました顔で……炎を撃っていた……」
「それは……関係あるのか?」
「澄ましていたというよりも……余裕がないような顔にも見えた」
「分かったことは……連射できないかもしれない、くらいか……」
「ごめん……力になれなくて……」
「いいんだ。何も知らないよりも、少し知れたほうが勝率が1%でも上がる」
「……仮にそうなら、まだいけるかもしれない」
「それに……俺には権蔵さんが作った大剣がある」
マギアのそのときの表情には、確かな希望があった。
その後、戦闘場所はセントラルタウンの中央広場付近にすることに決めた。
潜入は、私は正面から。マギアは壁を越えて上から。
私の役割は避難誘導と、その後の炎帝の能力看破の補助。
マギアは炎帝を倒すことに専念する。
そして、問題が再び浮上した。
「……雷雲やその他のヒューマ使いをどうするかだな……」
そうだった。忘れていたわけではないが、後回しにしていた。
「だよね……炎帝を相手にしながら他も相手にするのは……」
「不可能だな……」
会議が振り出しに戻ったと思ったとき、後ろから声がかかった。
「水くせえな! マギア! こんな面白い話を内緒でしてるなんてよ!」
この声は――。
「ジョセフではないか! 協力してくれるのか?」
「炎帝以外のヒューマ使いならな! 俺以外にも数人の賞金稼ぎが参加してくれる!」
「しかし、ジョセフは大丈夫なのか? 俺と同じノーヒューマだ」
「へへ……心配すんじゃねえ……俺たちにはこれがあるからな……」
男たちは徐ろに何かを取り出した。
「っ……それは……」
それは、この世界には存在しないはずのものだった。
悪魔の発明。
戦争の象徴。
銃。
マギアも同じことを考えているはずだ。
「……なぜ、それを持っているんだ……」
「こいつはな、水龍から出回ってきた禁制品さ。こいつはいいぜ。俺たちでもヒューマ使いになれる」
複雑な気持ちだった。
仲間になってくれるのは嬉しい。
しかしそれは、私の世界の悪い部分と繋がっているようにも見えた。
会議はまとまったため、一度切り上げることにした。
もう帰れないかもしれない。
だから最後に、ノーシティを見て回ることになった。
お世辞にも綺麗とは言えず、治安が良いとも言えない。
これも炎帝政治の影響だろう。
「ねえ……賞金首は誰がかけているの……」
「賞金稼ぎの稼業を取り締まっているのは……水龍だ」
「水龍は炎帝の優秀なヒューマ使いに懸賞金をかけている……岩纏いも炎帝側の一人だ」
救済のように見える制度は、誰かが一方的に得をする構造になっている。
弱者を救うように見せかけて、労せず敵の妨害をしている。
「俺たちは水龍に搾取されながら、炎帝にも弾圧されている」
「そうだったんだね……」
この街は、なるべくしてスラム街になった。
炎帝の正義と水龍の狡猾さに板挟みにされている。
この街は、誰からも選ばれていない。
その時だった。背筋が凍る。
――ドゴォオン――
近くで雷が落ちた。
「竹がやられたぞ!!」「死んでやがる!!」「炎帝の犬が近くにいるぞ!!」
悲鳴が響く。
「……勝てるわけがないんだ……」
これはまずい。一方的に殺されれば士気は下がる。
私は……なぜ街に行ったのだろう。
私は正義感で動いたわけではない。
これは個人的な知的好奇心だ。
あの街で、管理が正しいのかを見たかった。
その結果が、炎帝を倒すという選択だった。
私の“知りたい”は“知ってしまった”に変わり、
“見てみたい”は“戻れない”に変わった。
ようやく、私の中で整理がついた。
「雷雲が来てるぞ!! 逃げろ!!」
「カンナ! 入り口の方だ! 行こう!」
「カンナ……? どうした? 急がないと……」
「……マギアはジョセフさんたちと一緒に……炎帝のところに行って」
「なっ……」
「……ここは私が守る」
「今は冗談を言っている場合じゃない!」
マギアが私の両肩を掴む。
「今のが、冗談に聞こえた?」
私たちは見つめ合う。
「大丈夫……約束する……必ず勝って、生きて元の世界に帰るって」
「だから……マギアも勝って帰ってきてね」
「分かった……約束する」
マギアはジョセフたちを連れ、セントラルタウンへ走っていった。
私は雷雲の前に立つ。
すでに家屋の一部が焼けている。
「お前が? 女が俺の敵か? 舐められたもんだぜ」
「……舐めといていいよ……私は同格に見てるから……」
私の予想が正しければ――
この勝負は……。




