力任せの剣
10話です。
「あれ? マギア、どこに行くの?」
「ああ、権蔵さんの所に大剣を取りに行く」
「私もついていこうか?」
「大丈夫だ。この辺なら俺も一人で歩けるようになったからな。行ってくる!」
「ん、いってらっしゃい」
こっちの生活にも慣れてきた。
カンナとの生活も楽しい。
この生活を守るためには、俺は強くならないといけない。
そして、考えて分かったことがある。
俺には大剣が必要だ。肉体一つでは限界がある。
「おっ!彼氏君!今日は一人かい?」
「そうだ!大剣を受け取りに来たんだが、よいか?」
「ちょうどな!カンナちゃんに連絡を入れようとしてたんだよ。タイミングがいいな!こっちに来い!大剣の説明をしてやるよ」
説明がいるほどのことなのか?
とりあえず見てみるか。
「おお……これは……」
素人目で見ても分かる。
前の大剣とは雲泥の差だ。柄の長さも太さも、明らかに調整されている。
「チッチッ、それだけじゃねえ。お前さんの剣の弱点をカバーするために俺は頑張ったんだからよ。聞いてけ。まずはお前の大剣に含まれていた鉱石だ」
「こいつはな、衝撃にはめっぽう強い。だがな、熱にはめっぽう弱い! 長時間熱に当て続けると、歪みが出て最終的に砕けちまう」
……炎か。
「そこでだ! ステンレスとニッケル系を含んだ耐熱合金を圧着させて、表面の耐熱性を上げた! さらに、この大剣に掘られている溝を見ろ!」
斜めに刻まれた溝が、刃の両側に走っている。
「こいつで内部にこもった熱を効率的に逃がすことができる!
耐久力、耐熱性、そして扱いやすさを兼ね備えた、最高の傑作だ!」
「はは……ずいぶん語るな……」
「当たり前だ! 久しぶりの自信作だからな! 語らせろ!」
ありがたい。
これで、俺は前のようには負けない。
「……これさえあれば、あの時は……」
その言葉がこぼれた瞬間、権蔵さんの目が変わった。
哀れむような、呆れるような。
「お前な……道具に頼るうちは、まだまだだ」
「……ッ? 何故だ!?」
「当たり前だ! 道具ってのはな、力しか持ってねえ奴に振られるのが一番嫌いなんだ!」
大剣をひょいと持ち上げる。
「こいつは、まだ預かる」
「なっ……!?」
「柳さんの道場に行ってこい」
「柳さん……?」
「そうだ。そこで技術と心を教えてもらってこい」
……そこへ行けば、大剣は返してもらえるのか。
「分かった。ありがとう。行ってくる!」
「おう……行ってこい……
……あっ……受けてくれるかな、柳さん……あの娘……綺麗だから忘れがちだけど……コミュ症だからな……」
ーーードンドン
「すみません! 柳さんの道場はここですか!」
聞いた場所ではここらしいが、どうにも賑わっていない。
そもそも“道場”とは何だ? 初めて聞く言葉だったが、勢いのまま来てしまった。
その時、横にスライドするように扉が開いた。
「あんた……誰……」
これが柳さんか?
……背はカンナよりも明らかに小さい。
それに失礼だが、あまり強そうに見えない……
「おい……今、失礼なこと考えてるだろ……」
なっ……心が読めるのか?
「で……用は何だ……」
「権蔵さんに聞いてな! ここに行けと言われた! 何をしてくれるんだ?」
柳さんは小さな声で、
「……権蔵さんめ……」
と呟いた。
「で……私に何を求めに来た……早く言え……」
「強くなりたいんだ! あなたにできるなら協力してくれ!」
「……今……下に見てたよな……上がりなよ……」
上げてくれるのか?
ここはお言葉に甘えよう。
……それにしても、妙な歩き方だ。
足をほとんど上げていない?
「お邪魔します!」
「うるさ……」
柳さんは小さな木でできた刀を俺に渡した。
「先一で……やるよ……」
「ん? 先一?」
「先に……一本取った方の勝ちだ……」
「了解した! 要は倒せばいいのだな!」
「そう……一度だけだからな……打ち合いは……そっちから来なよ……」
「ならば……いくぞ!」
この高さ、この一撃。
彼女が受けきれるはずがない――!
カンッ、と乾いた音。
何が起きた?
弾かれたのか?
俺が?
力で負けたのか?
「くっ……」
同じ轍は踏まない。
次は来るだろう……来い……
……分身?
いや、移動しているのか?
彼女が目の前に来た瞬間、分身したように見えた。
「遅い……」
なっ――
今度は刀を奪われたのか?
確かに握っていたはずなのに。
「がッ……!」
避ける間もなく、面に一撃が入った。
数秒。
だが、俺は一つも理解できなかった。
ただ――動きだけが、脳裏に焼き付いた。
「お前の剣は……重いだけだ……帰れ……」
「待ってくれ! もう一度やれば、何か分かるかもしれない!」
「うるさい……私は弟子は取らない……」
追い出された。
……仕方ない。権蔵さんの所へ戻るか。
「おっ! 坊主! どうだ? 柳さんには会えたか? ……その様子だと会えたようだな!」
「……強かった」
「ん?」
「強かったんだ……彼女は……俺より小さいのに……俺より速く動いて……俺より強い力を持っていた……」
「なあ……権蔵さん……知っているか? 彼女の秘密を!」
「詳しくは知らねえが、それは“技術”って言うんだよ」
「……技術……」
「そうだ。俺の鍛冶も“技術”だ」
「これも……」
「今のお前さんになら……こいつを返してもいいな。ほらよ」
奥から大剣が運ばれてくる。
「いいのか?」
「お前は今日、“技術”を見た。
成長したんだよ」
「お前さんの剣はこれから、“力”だけじゃねえ。“技”も乗る」
「そうなのか……」
「そうだ! お前さんの目はいい! 俺の見る目が確かならな!」
「そうか! ありがとう!」
「おっ! 彼女ちゃんが迎えに来たぜ!」
「うっさい! ……帰るよ、マギア」
「帰ろうか、カンナ! 達者でな! 権蔵さん!」
「おう! お幸せにな! 二人とも!」
「色々あったんだね……顔が違うよ」
「そうか……そうかもな!」
俺たちの日常は、これからも続くはずだった。
俺は“技術”を学ぶ。
そして、カンナを守れるようになる。
そのはずだった。
「あっ……」
カンナの声が途切れた。
振り向くと、そこに“穴”が開いていた。
偶発的に生まれた歪み。
カンナの姿が、そこへ落ちていく。
「今行くぞ! カンナ!」
迷いはなかった。
俺は躊躇なく、その“穴”へ飛び込んだ。
柳さんは29歳の未婚者です。綺麗系。
剣道の段位は7段らしいです。
サブキャラに夢を一杯詰め込みたい。
武道では胸は小さいほうがいいよね。
身長は154cm




