ベタな展開の先に
私が高校生の時に執筆したものです。初めて書いた物語なので、稚拙な部分もあるとは思いますが、温かい目で読んでいただけると幸いです。
「あなたの隣にいさせてくださいっ!」
僕の声が後夜祭の花火が終わった後の沈黙を破る
ずっと閉じ込めてきた、まっすぐな気持ち
いやもしかしたら、この時のためにずっと大切にしまっていたのかもしれない
あの日から何日たっただろう
出会いは単純でベタな恋愛小説の始まりみたいなもので、とても単純だった
そう、君の笑顔に恋に落ちたその日から
僕と君はベタな展開の恋愛小説の登場人物だった
* *
「こら~、男子!準備終わったからって浮かれすぎ!文化祭はこれからだよ⁉」
「うわぁ~、藍原がキレたぁ!w 怖ぇ!」
「あっ、逃げるなぁ!」
まだ始まってないっていうのに、クラス内は騒がしい。
それもそうだ、この高校の一大イベントである「紅炎祭」、いわゆる文化祭が明日に迫っているのだから。由来は最大イベントである後夜祭の花火にあるらしい。なんでもテレビ取材が来るほど全国的に見ても大規模なものらしい。
勇火 (ゆうひ) は去年と違う後夜祭の予定に落ち着かないでいた。
僕は学級委員長である藍原花南に片想いをしている。
でも女子とはあまり関わりを持っていないし、喋ったのも数えられるほどだ。即答でお断りされたとしても仕方ない。
(でも、後悔はしたくないしなぁ‥‥)
随分前に哲平に相談した時に言われた言葉を思い出す。
「たまには名前らしく強気で当たってみたらどうよ?」
神山勇火 (かみやま ゆうひ)、それが僕の名前だ。
男子とは普通に話せるのに女子との会話となると、おどおどしてしまう僕には有り余る名前だ。しかし、哲平から「名前らしく」と言われた時は、不思議と何の疑問もなく腑に落ちたのだった。よって今年の後夜祭は別々に花火を見ることになったのだ。
花南にまだ伝えていないので、あくまで『予定』だが。
しかし、あと2日もあるというのに落ち着かない。
今年の僕のクラスの出し物は『オリジナル映画放映会』だ。
「機材の最終チェックでもするか。」
そうボソッと独り言を言って、機材保管場所に向かった。
* *
「遂に明日から文化祭かぁ。」
準備を一通り終えた花南は一人屋上でそう呟いた。
(今年の後夜祭は一緒に花火見られたらいいなぁ。)
勇火に片想いをし続けて1年以上が経った。2年になっても同じクラスになれたのは良かったが、特に話すこともなく半年が過ぎようとしていた。
(何かきっかけがあれば良いけど、休み時間とかは大抵男子の中心だもんなぁ。)
花南が勇火に恋をしたのは去年の7月、体育祭での事だった。熱中症気味でふらついていた花南を救護テントまで運んでくれたのがきっかけだった。次の日、男子バレーボールの試合での勇火の姿に一目惚れだった。
(普段はクールでかっこいいのに、話す時はちょっと恥ずかしそうにしているのも、なんかギャップがあって可愛いんだよねぇ)
心の中で呟きながらポケットからスマホを取り出す。その画面上には紅炎祭開催までのカウントダウンが表示されていた。
* *
紅炎祭が明日に迫っているということで、今日は前夜祭だ。有志で結成されたバンドや漫才コンビなどがライブやダン
スなどを披露するのだ。
去年は僕もバンドのメンバーとして出た。音痴なので間奏に踊って盛り上げるくらいだったけれど。
この学校では前夜祭のステージが二ヶ所あり、一方では軽音部やダンス部の発表、もう一方では有志発表が行われる。
(去年はあのダンスを藍原さんに見られていたんだよな…)
勇火が花南に恋をしたのはちょうど1年前の前夜祭だ。
ステージでダンスを披露した後、疲れ切っていた自分に
「お疲れ様っ!」
とリンゴジュースをくれた。あの時の花南の笑顔は今でも鮮明に覚えている。まるで夜空に美しく咲く花火のようだった。
その後話したのは、2年になってからたったの数回だ。
そう考えると、あの時ジュースをくれたのは花南の気まぐれだったのだろうかなどと思ってしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
気がつけば空が茜色に染まっていた。前夜祭までもう少しだ。
(先に行って哲平の分の席も取っておいてやろう)
まだ教室で誰かと話しているだろうからと、一歩歩みを進めた時、突然目の前が暗くなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「お、おいっ、お前!大丈夫か⁉おい!誰か救急車を呼べ!」
* *
前夜祭が始まった。さっき体育館に向かう途中で「救急車が来ていた」などという話も耳にしてから、根拠のない不安に襲われていた。
(‥‥まさか、神山君じゃないよね‥‥)
昨日まで一緒に準備をしていたが、少し疲れていたと思うし、なんだか悩んでいるようにも見えた。
そんなことを考えていた時、不意に肩を叩かれた。
振り返るとよく知っている人物が立っていた。
「日坂君? 何かあったの?」
特に何もなくてよかった。
「なんとなく」とかそんな単純な答えでよかった。
近くに神山君が立っていてくれればよかった。
でも近くに彼の姿はなく、哲平の口からは
「勇火が熱中症で運ばれた。」
その言葉を耳にした瞬間、花南の周囲で飛び交っていた様々な音がしんと静まり返った気がした。
そして何よりも、先程まで自分がそんなことを想像していて、現実がその通りになってしまったことにショックを受け、そんなことが想像できてしまった自分が心底嫌になった。
すると、花南の目尻からぽたぽたと水滴がこぼれ落ちる。必死にこらえようとするが止まらない。止めどなく溢れ出てくる。
すると哲平は花南の腕をつかみ体育館の外に連れ出した。
そのまま引っ張られて自教室まで連れてこられた。
哲平はポケットからスマホを取り出すと、どこかに電話をし始めた。すぐに終わる話だったのか哲平は1分ほどで電話を切って、「はぁ…」と大きくため息をついてから
「勇火、軽い脱水症状だから明日は学校普通に来られるって。」
と言った。
それを聞いて全身の力が抜け、止まり始めていた涙が先程よりもたくさん溢れ出してきた。
それを見て哲平はまた、ため息を一つ。
「んだよ、悲しくても安心しても泣くのかよ…。」
面倒くさい奴だと思われたのだろうか。でも今はそんなことどうだっていい。
「……っ‥‥神山‥‥君がっ…いなく‥‥なっちゃっ‥‥たらっ‥‥嫌だ…もん……。」
「‥‥そうか、良かったな。」
哲平はそう言って教室を後にした。
「……日坂君、ありがとう。」
教室に一人残された花南はそう呟いた。
* *
熱中症で運ばれ、意識が戻った勇火はひとり病室のベッドに横たわっていた。そして考える。
(絶対藍原さんにも伝わっちゃっているよなぁ……。あぁ、我ながらカッコ悪いなぁ‥‥。) と。
終わった‥…。絶対ダサいと思われているし…いや、というかこの時期に脱水症状とかあり得るのか‥…はぁ、マジか。
さよなら、僕の青春‥‥。
悲しすぎて目を潤ませていると病室のドアが開いた。
「哲平‥…。」
「よっ。考えすぎて脱水症状こした思考バカ。」
「………帰れや‥…。」
「おいおい、冗談きついぜ(笑)」
「冗談は顔だけにしとけってか。」
「まぁ、そういうこった。」
「その顔は僕に何か報告があるって顔だね。」
「おっ、さすが思考バカ。俺の心もお見通しってか。」
「‥…やっぱり帰れ。」
「はいよ、そこまで言うなら帰っちゃおうっと。せっかく藍原のことを友情に乗せて話してあげようという俺の親切心が働こうとしていたのになぁ。あ~あ。」
「ちょ、ちょっと待て。悪い、俺が悪かった。まぁ、ゆっくり休んでけって。」
哲平はなかなか情報といったものを言う方では無い。しかも花南の情報だ。これは勇火にとって逃すわけにはいかない。さっと椅子を哲平の近くに出す。
「お、気が利くねぇ」
調子の良いやつだ。だが、情報がもらえるのだ、我慢しよう。
「それで?藍原さんに関する情報って?」
「まぁ、大した情報じゃないんだがな。藍原、お前が倒れたって知ったとき、メチャクチャ泣いていたぞ。唐突にポロポロ泣き始めるもんだから俺もビビったわ。」
「えっ?藍原さんが?」
「そうだが、どした?」
「いや、てっきりダサいなって思われたかと。」
「心の中は分からんよ?でも、俺の見る限り悲しくて泣いて、俺がお前の事運んだ先輩に連絡取って安否を聞いたあと、無事だって伝えたら安心して泣いていたよ。」
「そうか、そうだったのか。」
「そうだ。まぁ、ダサいは多分ないんじゃないかなぁ。」
「‥‥ありがと。後で肉まん奢ってやるよ。」
「おっ、ありがと。じゃあ、俺はそろそろ帰るぜ? てか、お前、点滴もう無くね?」
自分の静脈に刺してある管の先の袋を見ると確かに空だ。
「あ、本当だ。それなら哲平、少し待ってくれないか? 俺も恐らく帰れる。」
「おっけー。入り口で待ってる。」
「うん。ありがと。」
そういうと哲平は病室を出ていった。勇火はナースコールのボタンを押す。
(そうかぁ、良かったぁ)
花南に嫌われてはいない、恐らくだが。
今の勇火には、それだけで嬉しかったし安心した。
「ありがとな、哲平。」
勇火は一人病室でそう呟いた。
簡単な診察を受け、勇火は帰ることが許された。親に連絡を取ろうと思ったが、入り口に哲平を待たせているし、そもそも両親が出張で家にいないことを思い出した。
今夜の夕飯をどうしようかと考えながら病院の自動ドアをくぐる。するとそこに立っているのは哲平だけではなかった。
「あ、藍原さん⁉」
* *
教室に一人残されていた花南は一通り気持ちの整理をつけると、一先ずクラスメイトの所に戻った。明日の紅炎祭当日のシフトについてや最終チェックなどが残っているからだ。勿論、そこに哲平の姿は無かった。もしかしたらと思い、一通り説明やミーティングを終えてから哲平にLINEを送ってみる。
『ねぇ、もしかして日坂君って神山君の所に行ってるの?』
既読はすぐにつき、返信がきた。
『あぁ、いる。あいつ、もうすぐ出てくると思う。』
そのメッセージを見て、急いで自転車にまたがり、病院に向かった。病院に着くと、まだ勇火は出てきていないらしく、入り口に哲平が立っていた。
「よう、藍原。随分と早かったな。」
「はぁはぁ‥‥当たり前でしょ?クラスメイトなんだから。」
「ほぉ、本当にそれだけかなぁ。」
「‥…何よ?」
「いやぁ、別にぃ?」
哲平はいやらしい笑みを浮かべてそう言った。
‥‥‥‥‥‥少しの沈黙。
(え、もしかしてバレてるの⁉ 嘘でしょ⁉)
「あぁ、バレてるな。少なくとも俺には。」
「うわっ!気持ち悪い!」
「何だ? 心を読まれたってか。すまないなぁ、藍原が『バレちゃってるの⁉』みたいな顔してるから、ついな(笑)」
「……もう、最低‥‥‥‥‥私ってそんなに顔に出てる?」
「あぁ、それはもうバッチリ。」
「そうなんだ………………はぁぁぁもう、最悪。」
「ははっ、まぁそんなこと言うなって(笑)」
‥‥‥‥‥……‥また沈黙。
そこに自動ドアをくぐって勇火が病院から出てきた。
「あ、藍原さん⁉」
彼は驚いたように言う。それもそうか、哲平だけだと思っていたのだから。
だけど、勇火の驚いた顔があまりにも面白くて思わず笑ってしまった。
「えっ?僕なんか面白かった?」
「多分お前の驚き方が面白かったんだろ。」
「そ、そうかなぁ…。」
「あぁ、間の抜けた声でポカンと口を開けて驚いているからな。笑われても仕方ないって顔だ。」
「そんなぁ‥‥。」
二人はそんなことを話している。
その後、勇火と哲平は電車に乗ってそれぞれ帰って行った。花南は駅まで付いていき、その後帰路に就いた。
* *
待ちに待った紅炎祭。校内は去年にも増して、熱気が感じられた。校内には出し物の呼び込みをする声が飛び交い、笑い声が絶え間なく響いている。放送部が校内放送で様々なことをアナウンスしているが、部分的にしか聞こえない程だ。
体育館に移動してみれば、こちらも軽音部のライブで物凄い熱気だ。まるで本当のライブハウスなのではないかと思うくらい照明や内装が工夫されている。ここが高校の体育館なのだということを忘れてしまいそうだ。
そして、僕たちのクラスの出し物である『オリジナル映画放映会』は、想像以上に大盛況だ。毎回満員になっているし、入り口で販売しているチュロスも人気で材料が足りなくなり始め、買い出し班が緊急出動するほどに繁盛していた。
「これは、隣のクラスの飲食店より売れてるんじゃね?」
「な? 絶対売れるって言っただろ? なんて言ったってこっちにはパティシエの息子がいるんだぜ。」
チュロス販売担当の男子たちはキラキラの笑顔でチュロスを売りながらそんなことを話している。
(確かにただ見るより、何か飲食物があるだけでここまで繁盛するんだな。)
勇火も思わず感心してしまう。『オリジナル映画放映会』は勇火が提案したものだが、そこに
「映画ならやっぱり飲み物とチュロスだろ⁉」
と、とある男子が提案したのが始まりだった。先生の許可も得られ二つの出し物を同時進行で準備したが、まさかそれでこれほどの効果が出るとは思っても見なった。
「おーい、神山。そろそろ交代だぞ。」
そう声をかけられて勇火は、はっと我に返る。
「おっけー。じゃあ、後は頼む。」
「任せとけって!楽しんで来い!」
そうやり取りを交わした後、勇火は教室のドアをくぐり廊下に出る。するとチュロス販売担当の男子から
「おいっ、神山!お疲れさんってことで、ほい。作りたてチュロス!」
「おっ、ありがと。…って何で2本?」
「ん?あ、あぁ。それは、ほら!美味いものはいくらでも食えるっていうだろ⁉」
「あ、あぁ。じゃ、ありがたく貰うよ、ありがと。」
なんとも歯切れの悪い答え方だが、気にしないでおこう。
「おうっ!楽しんで来い!」
廊下を歩いて数分、僕は校内の端にある小さなイートインスペースにいた。ダメだ、視線が凄かった。
(さすがに、チュロス2本持ちで校内を歩くのは‥‥な。)
そう思っていると、「隣、座ってもいいですか?」と不意に声をかけられた。しかも良く知っている声だ。
「藍原さん⁉」
「あっ、ダメだった?」
「い、いえっ。1人だから問題ないよ!」
「そう?良かったぁ。あっ、チュロスだ!それ、私たちのクラスのチュロス?」
「そうだよ。あ、藍原さん1本食べる?なんか2本くれたんだけど。」
「えっ、いいの⁉」
「うん、こんなに食べたら他クラスの食べ物食べられなくなっちゃう。」
「本当⁉ありがとう! そうだ、神山君これから誰かと約束してる?」
「えっ、してないけど。どうして?」
なんだ、なんだ。デートのお誘いか⁉ いや待て、まだ付き合ってないし、そもそも告白してもないし!じゃあ、なんだ⁉
「ん~。神山君、また1人になったらどこかで倒れちゃうかもしれないでしょ?(笑)心配だから私が付いていてあげる!」
あっ、そういう感じですかぁ。残念、思い上がるな俺。
ドンマイ、アホなのか俺。
「そっ、そうだね!じ、じゃあお願いしようかなぁ!」
「うんっ!お願いされました!」
その時の彼女の笑顔は女神だった。数十秒前、変な妄想をした僕をぶん殴ってやりたい…。
こうして僕たちは1日目、2日目ともに似たような動きをした。なぜか、2日目も同じようにチュロスを2本貰えた(笑)
こうして、2日目校内の出し物が終了し、いよいよ後夜祭の花火が近づいている。
まだ隣には花南がいる。誘うなら今しかない。
今しかない。ビビるな、俺。
告白よりも少し少なめの勇気でいい。
「あのっ、藍原さん!…花火、一緒に見ませんか⁉」
・・・・・・・・・・・数秒の沈黙の後、花南の声。
「うん、いいよ。」
よっしゃぁ、と勇火は心の中でガッツポーズを決める。
「じゃあ、場所探そうか。」
「うん。」
「あっ、花南~。やっと見つけた!花火始まるよ~?早く行こう?」
(なにッ⁉ 凄いバッドタイミングなんですけど⁉)
「あ~、ごめんっ!今年は先約がいるんだぁ。」
(えっ?)
「え~。もう、仕方ないなぁ。明日のカラオケは絶対だからね!」
(えぇぇぇぇ―――――‼‼‼‼)
「えっ⁉ 良かったの?俺なんかより友達と見た方が…。」
「えへへ、今日はいいのっ。ていうか、神山君って焦ると『俺』になるんだね。面白い!」
(かわいい!天使かよっ!マジかぁ! ありがとうございますっ、恋の神様! 来年のお賽銭はフラれたとしても千円札入れます!)
「じゃあ、探そっか。」
そう促されて、僕たちは場所を探し始めた。
・・・・・・・・そうして5分後。
「ここなら人も少なくて見やすいね。」
「そうだね。ありがとう、神山君。」
「いえいえ。」
花火が始まった。紅色の美しい花火だった。
さぁ、ここからだ。
俺の青春のページがめくられるのか、破かれて終わるのか。
そう考えていると、花火は終わってしまった。
(よしっ、やってやるぞ!当たって砕けませんように!)
「あのっ、藍原さん!」
「あなたの隣にいさせてくださいっ! 」
「えっ、」と花南は目を丸くしているが構わず続ける。
「高校にはいってからずっと好きでした!
僕は秋後半になっても熱中症で倒れるほどの弱っちい男だけど‥‥絶対に毎日を今以上に楽しいものにしてみます!
だから、俺と付き合って下さい!」
あぁ、何言ってんだ。『僕』って言ったり『俺』って言ったり。
花南はまだ目を丸くしている。
『何を言ってるのこの人は⁉』という感じだ。
(・・・・・・・・・・・終わったな)
僕がそう感じ「いきなり、ごめんね」と謝ろうとした時
「‥‥私も、神山君のことが好きです。」
それは僕の耳にはっきりと届いた。
「えっ、」
てっきりフラれると思ったのに
こんなにもダサくてパッとしないのに
そう思うと自然と涙が出てきて
(こんなことならもっと早く告白すればよかったな)
なんて思った。
でも、もしも今日より早く告白していたらフラれていたかもしれない。本当に恋とは偶然なものだ。
「藍原さん」「神山君」
『これからよろしくお願いします。』
* *
「ったく、何であの二人は。何かと急なんだろうなぁ。」
「仕方ないな、何せ新郎さんが神山じゃあな。忙しくて藍原に急かされている様子が目に浮かぶわ(笑)」
「まっ、そういうことだな。おっと、哲平。ネクタイ曲がってるぞ。」
「おう、悪いな。サンキュ。」
「さて、そろそろ式が始まるだろ。行こうぜ。せっかく招待されたんだ。パーッと盛り上げてあげましょうや。」
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