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44 解きほぐす6

 話は続いた。


「その狐から、数ヶ月前から異変が生じているようだと連絡が届き、直ちに詳細を調査させました」


 狐のことだからだろう、静峨が答えた。


「何かわかったか?」

「……水落鬼の件が片付けられた後、大学の同級生と暮らしていることはわかりました。壬司家のほうからも、そのようにしか返事を得られず……」


 悔しげな静峨に対し、梓玥はあくまで冷ややかだ。梓玥が、自分のことを探っている者の存在に気付いていて、隠そうとしたなら、彼らが気付くのは不可能に近い。だから悔しがるだけ無駄だ。そう言っても納得できるかは別問題だろうが。


(格上相手の術は破れないのが基本だもんな……)


 神の術など、神にしか破れないだろう。

 壬司家、瀧の実家が梓玥のことを言わなかったことは不思議ではある。何か口止めか禁言術をしていたのだろうか。


「水落鬼の目的は」


 静峨が淀みなく答えていく。 


「対象の封印の強度の確認。もし綻びが出ていたり薄くなっているようなら、再封印をかけなければならないので」

「そのためにわざわざヒトの大学のプールで?」

「死ぬやつが出なかったからいいけどさー……」


 ぼそぼそと引き気味の顔で真岡と西山が囁き合っている。瀧も同意だ。


「あの……なんで直接、その監視対象っていうやつのところに行かなかったんです?」


 嶋田が質問すると、栢葯が頷いて答えてくれた。


「仮に監視対象が己の正体に気付いていた場合、逃げられる可能性があった。それを避けるため」

「また、何らかの理由で監視対象の本性を知った者と一緒にいる場合、監視対象を利用する可能性が高いと判断しました」

「竜神としては最初に相談を受けた際、寝耳に水だった。倭国の竜神は何の報告も寄越さなかったからな。だが追及するのは後に回し、水落鬼の件の報告を受け、宰相クラスで話し合いを行った。結果として、介入することにした」


 栢葯は全身白い。運動部の連中のように体格が良いから、どこか威圧感がある。だがそれも梓玥の前では子猫のようなものか。頑固そうな雰囲気もある。


「竜神が関わってからは動画のことになる」

「あの……質問いいですか」


 おそるおそると真岡が手を挙げる。発言を許すのは梓玥。


「なんだろうか」

「ヒトとして産まれる予定だった奴が前世? で狐神だったっていうのは話から汲み取れたんですけど、それで大陸と倭国の狐神が絡むのもわかるんですが、なんでここで竜神が絡んでくるんですか?」

「……真岡、よくわかったな」

「読み取り能力高いですね……」

「さすが部長っす」


 小声で自分たちの部長を褒め称える横で、梓玥が栢葯を指名した。


「何代前かの竜王の頃、狐神の公主と子を成した竜王がいた。問題は王にではなく、公主のほうにあった」


 狐神の公主は呪いにかかっていた。生来の魅了に加え、蠱惑の呪いだ。それも九尾だったせいで。


「呪いは誇張なく狐神の全民に及ぶようなもので、おそらく狐神以下の序列の神族も呪いに当てられる。……そこで、その公主を託されたのが竜神というわけだ」

「なるほど、狐神より格上の序列なら、大きな被害を受けないってわけっすね」


 梓玥が少しだけ口を挟む。


「もちろん完全ではない。だが竜王と公主はふたりで作り上げた結界の中に、公主と、ふたりの間に産まれた男の子を住まわせることで呪いの拡散を防いだ」

「竜王は公主に惑わされたわけではないとわかっている。だが、ここで問題が生じた」


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