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41 解きほぐす3

 気を取り直したのは真岡が早かった。


「水落鬼のほうも動画のほうも、神族が関わってる……同じ神族か?」

「手口はちょっと違う気がするけど……」


 水落鬼は水落鬼自体の手配は陰陽師にやらせた。動画のほうは既存の動画を上書きして多くの人を巻き添えにしている。ふたつを並べた時に、目的が同じだとは思えない。


(水落鬼を何のためにプールに放ったのか、梓玥さんは言ってないけど……それも目的がオレなら、違うようで同じ目的ってことか)


 狙うなら他人を巻き込まないようにしてほしい。そこについては怒っている。


「それにしても黎さんに喧嘩売るって……竜神族に喧嘩を売るって、相当じゃないですか?」


 真岡がおそるおそるながらもしっかり梓玥を見ているのは、彼にだいぶ慣れたということだろうか。

 竜神族は神族の序列でもトップ。温厚な一族ではあるが、『竜の逆鱗』の言葉があるように、一度怒らせると何が起こるかわからない。竜の能力によっては酷い天災を引き起こすこともあるという記述は史書にある。その時は竜神国を壊滅に追い込みかけたとか。


「相手は、私が瀧の傍にいることを知らなかった」

「えっ?」

「……あ、姿や素性を隠してたからってことですか?」


 気付いたのは真岡が早かった。他の者たちより術と馴染みが深いからだろう。ハッとした顔で全員が梓玥を見る。「そう」と梓玥が頷いた。


「今この瞬間も、彼らには私が知覚できていない」

「そんなことできるんだ……」


 西山や嶋田が感心したような、尊敬のような眼差しを梓玥に送っている。もちろん、誰しもが梓玥と同じ術を使えるわけではないことを、瀧は知っていた。


(神さまの術なんだから、神さまじゃない相手がわからないのも無理ないよな……)


 どちらかといえば、相手に対する同情になってしまう。


「それで、黎センパイ。犯人はわかったんすか?」

「今からその犯人を捕らえる」

「今から?!」

「そのためには、瀧の協力が不可欠になる」

「オレの?」


 この前、言っていたことだろうか。――皆の前で正体を晒すことになると。


「いいよ。ええと……今、ここででいい?」

「うん」

「皆、ちょっと驚かすけど……」

「えっなに? 何が始まるの?」


 三人が瀧と梓玥を交互に見る。瀧は目を閉じると、スッと深い集中へ入った。


(自分の奥のほう……うん、ある。なんか、やっぱり変な感覚だけど)


 意識の奥で服を着替えるような感覚に近い。

 そうして、目を開けた時には瀧の姿は九尾に変化している。


「た、タキ……!」

「おまえそれ、狐?!」

「ふっさふさっす……!!」


 約一名、目の付け所が違う男がいるが、それはこの際置いておこうと周囲を見回す。梓玥は結界も緩めたはずだが、周囲の生徒たちが瀧に注目する様子はない。


(いつもどれだけガチガチの結界を張ってくれてたんだろ……)


 感心していると、不意の殺気を感じた。振り向けば、ふたりの漢服姿の男が今にも棒や剣を振り下ろそうとしていた。


「今度は何?!」

「……神族、の方?」

「なんで!?」


 騒然とするオカ研メンバーと対照的に、瀧は落ち着いて梓玥を振り返った。


「梓玥、さん」


 瀧の視線を受けて頷いた梓玥は、右手を軽く下げただけで男たちの武器を落とさせ、両膝を床に着かせた。顔を上向かせもさせないのは、どういう意図があるのだろう。それとも顔を上げられないだけなのか。


「……この者たちが実行犯だ」


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