13 夢
瀧がたまに見る夢では、自分はどこかの森の中の小さな家に閉じ込められている。
家は大陸風で、本だけは大量にあった。広い作り窓の外が雨だろうと晴れだろうと、外には出られない。結界が張ってあるからだと知っている。
何度も読んだ本のページをめくっていたある日。
庭に、侵入者が現れた。何度かやってきている子どもだ。
「また来たの? 早く帰りな」
肩まであるつやつやの黒髪、日に焼けていない白い肌、大きな薄青の瞳。紺色の襟以外は、彼の瞳の色のような薄青の衣服だ。身なりはかなり良い。少なくとも貴族の子弟だろう。目が合うと、彼は瀧の顔をじっと見つめる。
家だけでなく、周囲には目眩ましなどの結界も張られているのに、この子はどうやってここまで来られたのか。聞きたくもあるが、些事でもあるから聞いたことはない。
「あなたは、ずっとここに住んでいるのですか」
「まあ……そうかな」
正確には住んでいるわけではなく、閉じ込められているのだが。そんなことはこの子どもには関係がないから黙っておく。
窓の外から背伸びして窓枠に手を掛けている姿は可愛らしい。彼の背がもう少し伸びれば、そうする必要もなくなるだろう。けれどその前にここに来ることをやめさせたくはあった。
「いつまで?」
「いつまでも」
「…………」
子どもは何かを言おうとして躊躇しているようだった。代わりに、何かを窓から差し出してくれる。そっと受け取った。
「……花?」
「きれい、だったから」
「オレに?」
「うん」
「……いい子だ」
白い小さな花、大きめの白い花、青みがかった白い花、黄色っぽい白い花。白だけれど彩り豊かな小さな花束を受け取った。小さな手は土で汚れていたから、一生懸命集めてくれたのだろう。
自分のためにそんなに一生懸命になってくれる相手は、今はこの子だけだ。頭を撫でてやりたいが、結界があるから手を伸ばすのは躊躇われた。
「ほら。誰か探しに来るといけない。早くお帰り。……右から行くと、小さな川がある。水が綺麗だから、手を洗って帰るといい」
「……はい」
素直に頷いた子どもは何度も振り返りながら駆けていく。その背中を見送ると、瀧は花を杯に活け、読みかけの本の開いたページに視線を落とした。
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