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第3話 プロローグ その3

「いや!なに!!暗い!狭い!」

 くぐもっているが彼女の声が聞こえる。


口の中とはいえ、まだ生きているようだ。

 そして、そのままゆっくりと上に上がっていく。それは蛇がネズミを丸のみにして食べるような動き。その塊が向かう先はバケモノ身体。

 さきほどのまで死んでいたはずのバケモノが生えており、生きていた。


「う、嘘……なんでバケモノの頭が生えているの!たしかに吹き飛んでいたのに!」

 目の前ではバケモノが首をうんと長くしてミミズのように蠢いていた。そしてうねうねと首を動かしながら起き上がった。

 「いや!どこにいくの?狭い!いたい!いたい!いたっ!あぐぅっ!」


 ミア様の声が聞こえなくなった。そしてバケモノの身体の中まで彼女は進んでいく。

 人一人分の体積はバケモノの中に納まる。そして首を引っ込め、元の姿に戻ってしまった。いや、その身体は一回り大きい。食べた分少し大きくなっているようだった。

  得体のしれない恐怖が私を包んでいく。

 それなのにも関わらず、私は立ってその光景を見ている事しか出来なかった。

「みんな!逃げるぞおおおおお!乗れえええええ!!」

 サクリ様が大きく叫び、慌てて戦車の中に入っていく。

 ゼーアも慌てて走り、中に入った。

「先輩もはやく!」

「わかった!」

 ゼーアの声が聞こえ、私もハッチに走り飛び込んだ。

 呆けている場合じゃない!

逃げないと……

 そう思うと、先程のミア様の最期が脳裏を刺激してきた。


 「ファーストのみなさまも!」

 私は声を荒げるも、彼女たちは「わああああああ!」と叫びながら武器を持っていたライフルを頭に向けて一斉に撃ち始める。

 その銃弾はバケモノの頭を打ち抜き、弾け飛んだ。

「えっ?やった?」

「先輩!やってません!あれは罠です!」

 その光景に私は恐怖を覚えた。

 吹き飛ばされた頭が再生し、傷一つない状態になった。

 そして、その後銃弾をはじく。

「さっきのも罠だったんだ。死んだふりして、油断させて、わたしたちを食おうとしているんだ!」

 ファーストの一人が叫ぶ。

 その言葉にハハハハハハと言っているかのようにバケモノは大きく口をあけて笑っていた。

「わ、わたしも乗せ……」

 

 その瞬間、バケモノはハルバードを一振りし、彼女たちを刈り取る。

 絶望した瞳が涙を流しながら、こちらを向いた。

 「イギィ!」「スギっ!」「いぐっ!」

 ファーストたちは痛みの言葉が少し漏らしたあと、彼女たちは物言わぬ肉と化した。

 そして無残に地に伏して動かなくなった。


 私はその光景を見てどんどんと心臓が跳ねるように鼓動し、呼吸が早くなっていく。

 心がグルグルと回って肌を死がなぞってくる。

「いや!死にたくない!いや!」

「先輩!落ち着いて!」

「みんな掴まれ!準備できた。走らせるぞおおおおお」

 サクリ様が叫び、皆は各々、捕まった。エンジンの唸り声と共に

 「ゴオオオオオオオオオ!」とバケモノも叫ぶ。

 動き出した戦車と共にバケモノも走り出した。

 「ゼーア!お前、走りながら砲弾を撃て!」

 「わかりました!」

 ゼーアは一人で揺れる車内でも器用に砲身を動かしていく。

 「わ、わたしが外の確認をするわ」

 震えてる場合じゃない。私も何かしないと死ぬ!


「先輩!お願いします!」

 社内カメラを確認しながら、バケモノを見る。

 怖い……その口には血が滴っており、ミア様がもう生きていないことがはっきりと分かった。

 そして、遠目に虫の死骸ように転がるファーストたち。

 「撃ちます!」

 その砲撃が放たれるもバケモノはそのハルバートを一振りし、弾を叩き落とした。

「嘘でしょ!そんなことが出来るの?」

「諦めるな!まだ私たちは生きてる!生きて……」

 カメラにバケモノが突如として消える。

「えっ?」

 ズシンと車内が揺れ、装甲がギシギシと軋み始める。


「きゃああああ!」

「上!上にいるわ!」

「ゼ、ゼーアちゃん!サクリさん!どうしたら!」

「みんな掴まれええええ!」

 サクリさんが急ブレーキをかけ、車体が大きく揺れる。

 急速な重力が身体を襲った。

「これなら!振り落とせる!」

 ドゴオオオオオンン!

 轟音と共に車内が揺れ、熱を感じる。

「対戦車地雷です!バケモノを振り落とした先に地雷があったと思われます。サクリさん!早や……」

 ガガガガと鉄の軋む音が聞こえる。

「アクセル踏んでるが動かねえ!何かに掴まれてるみたいだ!奴だ!ヤツに違いない!」

「対戦車用地雷でも死なないの?!」

「くそ!くそ!くそぉ!」

 サクリさんはハンドルにやり場のない悔しさを叩きつける。

「サクリさん!落ち着いて!」


 ガッ、ギギギギ……

  鉄が裂ける音、私は思わず、そちらの方を見てしまった。


 「あ」


 そこにはバケモノが目の前にいた

 私はそのバケモノの目を見つめてしまった。

 小さいが目がそこにあってグルグルと回って、中の様子を確認しているのが分かった。

 ゼーアちゃんが言っていた意味がよくわかる。

 生物とは思えない素早い眼球の動き。

 『バケモノは私たちを観察している。こちらの戦力と自身の戦力差を観察しているんだ。』

 そう言っていた意味がよくわかる。

 バケモノがギョロっとこちらに目を止めた。

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