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第2話 プロローグ その2

私は2台のカメラを持って戦場を駆ける。

 以外にもみんな目の前の敵に集中していて私の奇功を誰にも言われない。


 そして、少しずつ、ファーストのみんなもゆっくりと後退していている。

  何十、何百という鉛玉を打ち込んでいるにも関わらず、バケモノの侵攻は止まらない。


 カメラ越しからでも、ファーストたちの焦りが強くなっていってるのが鈍感な私にも伝わってきた。

「みんな!少し距離を取るよ!」

 ミア様がそう叫んだ瞬間。

 ずん!

「え?」

 バケモノが地面を大きく踏み込み、距離を縮めた。その跳躍は素早く、身構える前にミア様の前に立つ。その距離はバケモノが手に持つハルバードの射程圏内。

 彼女の確実な死が目前に迫っていた。

 バケモノがニヤニヤと笑っているように見える。


 現にすぐに殺せばいいのに少し悠長にこの光景を楽しんでいるようだった。

「う、うそ……この私が初陣で死……」

 彼女の顔に死の恐怖がはっきり映った。他のファーストたちも同様だ。

 可憐で優雅で凛々しかった彼女たちも死の恐怖にあらがえず、震えている。

 「みなさん!穴に飛び込んでください!」


 私は声が出る限り叫んだ。周囲には手りゅう弾であいた小さな穴があちこちにある。

これは一か八かのお願いだ。もしかしたら意味がないかもしれない。でも可愛い後輩がやろうとしていたことが私にもわかった。

 戦場の轟音が飛び交うなか少しずつ大きくなっていた音が私の耳に届いていたのだ。


「みんな!、飛ぶよ!」

 ファーストたちが次々に飛ぶと同時に。

 ウィイイイイインン!!

 戦車の駆動音が唸り、鉄の塊がバケモノへと突っ込んで行く。

「グオオオオオオオオ!!」

 轟音と共にバケモノはその鉄の塊に吹き飛ばされ、地面に突っ伏した。

「イェーガータイプアルファ戦車!誰が乗ってるの!?ここは対戦車地雷だらけよ!」

 ミア様が穴から顔を出し、大きな声で叫んだ。


 巨大な戦車は周囲の穴に隠れた彼女たちを潰すことなく、進むことができたようで死んだ人は一人もいなかった。

「ガアアアアアアアアア!」

 バケモノは戦車で突き飛ばされたのにも関わらず、すぐに起き上がり、戦車に向かって獣のように吠えた。

 そして、戦車の砲身が動き、バケモノの頭まで狙いをつけ、ドオオオオオンンと轟音を響かせた。

 「あたった!」

 ミア様が叫ぶ。


 砲身から登る煙が晴れるとバケモノの頭は吹き飛んで無くなっていた。そしてスジンと倒れて動かなくなった。

「た、倒したですの……?」

 ミア様!それフラグー!と思うも敵の頭は吹き飛んでしまっている。さすがにバケモノも頭を吹き飛ばされては大丈夫だろう。

「いったい誰が……って新聞係?!」

 その言葉と共にゼーアが戦車からハッチを開けて出てきた。


 「ゼーア!やっぱり!あなただったのね!」

 私はカメラを一つ置いて、可愛い後輩にむかって手を振る。

 「やめてください。先輩……」

 そういいつつもゼーアの顔は嬉しそうだった。

「あなた!何をしているの?そんな乗り物に乗って地雷地帯を駆け抜けてくるなんて正気じゃないわ!それを壊してしまったらどうするつもり!?」

 ミア様がわなわなと震えて怒りを沸かせていた。

「おいおい、戦車乗りのワタシも一緒に突っ切ったんだ。この娘一人の責任じゃないよ」

 中からもう一人ハッチから顔を出し、降りてきた。おそらく、操縦してきたのは彼女なのだろう。

「サクリだ。よろしく」

 姉肌のカッコイイお姉さんは思いつめた顔つきで声をかけてきた。


 「はん、わたしより先輩で階級が上かもしれませんが、ここに一人でいるって事は逃げたって事ですよね……」

 ミア様は食って掛かるように睨みを聞かせ、静かに言った。

「とんだ娘だ。私以外死んだんだよ。私以外のみんなが戦車から降りて先に逃げちまったんだ。そしたらみんな殺されちまった。

 それで大人しくしてたらよ。敵がどっかいっちまって、しばらくして逃げたら道中にゼーアがいてな。それでツッコんできたってワケなんだけど……」

「まあまあ、ミア様、サクリ様もいったん落ち着いて!ゼーアも戦車も無事でしたし、敵も倒しました。きっと上官も許してくれますよ」

 「フン、まあ、いいわ。これからだけど、このまま進軍して味方と合流しましょう。みんな武器のリロードをして」

 ミア様は持っていたライフルの弾を装填していく。


「却下、撤退した方がいい。おそらくだが、もうほとんど生き残りはいない。東側の戦車部隊は目に見えない何かによって、ほとんど壊滅。

航空部隊は空飛ぶ超巨大イモムシにほとんど食われた。敵を倒せたのはおそらくここだけだ。軍本部が考えているより生体兵器の強さは高い。撤退した方が賢明だ」

 その言葉にファーストたちは各々表情を変える。

 現状の絶望。偉業の達成。生き残れた奇跡の安堵。

 ミア様は震えていた。そして口を開く。

 「皆さま、わたしからの提案ですが、この生物兵器を母国に持ち帰りましょう。この兵器を解析して反撃の手を作るのです」

 ファーストたちに希望の目が輝く。

 ゼーアの言っていた味方の鼓舞の仕方が分かっていると言っていたがバカな私にも理解できた。

 今の戦力では次はない……

 みんな心のどこかで考えていたのだ。

 「それじゃあ……」

 バシュ! 

 ミア様の頭に大きな頭が迫り、そのまま全身を包み込んだ。

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