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事件は幽体離脱と共に起きる!

やっと事件発生、前置きが長くなりました。


 私こと小説家 加納慎吾は今東京に居る。


 担当者の田中と打ち合わせをする為に、朝から新幹線に乗り岡山からやって来たのだ。

 東京駅から新宿まで行くと徒歩直ぐのところに出版社があり、受付に尋ねると1階のサロンに通され担当の田中が降りてきた。

 

 担当の田中はサロンの椅子にすわるなり

「あれから、どの様な感じになっています」

 口癖のように幽体離脱の事を聞く様になった。

「いつなるか分からないので……」

 いつでも幽体離脱できるが、面倒なので誤魔化し言葉を濁している。


「そうですか、なかなか体験が集まりそうに無いですね、まあーコレばかりは仕方がないとは思いますが!」

 担当者としては早く話しが集まれば、面白い本が出来るとワクワクとして居る様子だが。

 いつでも幽体離脱出来ると知ったら、らかなり追い込まれそうだ

 それだけは避けたい。

 作品ヒットはしたいが、私の身体にどの様な影響が出るかは今のところ不明であるからである。

 今回は「幽体離脱で旅日記」の第一話の原稿を書き終えていた。まあ、体験した事なので数時間で書き終えてしまい、担当の田中に見せるためにやって来てはいたが、田中の反応はイマイチに見えた。

 「加納先生、導入としては良いのですがこれからの方向性を示すエピソードが有ればもっと良いのですが!」

「……!」


 おいおい、無茶苦茶な事を……

と、口から出そうになったがまあ、編集者としての彼の言ってる事も分かる為、言うのを抑えた。


 2時間打ち合わせをし、出版社を後にした。

 昔なら出版社も景気が良く、この後は接待とかあったのだろうが、なにせこのご時世何もなしで終わっている。

 わざわざ東京まで来てどうしようかとも思ったが、新幹線に飛び乗り帰る事にした。

 まあ、売れない作家の扱いはこんな感じで有ろう!

 まだ、編集者と打ち合わせ出来るだけましである。本が出ない間は読んでもくれないのが常であった。


 新幹線が新神戸を出た辺りでトイレに行こうと立ち上がった時に立ち眩みがした。


 意識が遠のいていく。

 幽体離脱している。

 身体は元の席に居るのが見える。

 なぜ、こんな時に

 身体から離れていく、コントロールが出来ない。

いったいどうしたんだ

 何かに捕まれた感覚がある、引っ張られている感じだ!

 急激に吸い込まれて身体が上昇してる感じ。

 目の前が真っ暗になり闇に消えた。


 やがて、身体にブレーキが掛かりゆっくりと身体が浮いている。


 その後私は病院に運ばれる事となる。意識不明で!


 一刻も早く戻らなければならないが、今回は自由が効かない。


 私の下を赤ちゃんを抱き抱えた女性が通り過ぎていく。間もなく岡山駅に到着で女性はデッキで待機しているようだ。

 前の車両が何やら騒々しい。30代前半の女性が泣きじゃくっているのが見える。

 どうしたのだろう!

 私は側まで行き天井付近で成り行きを見てみることにした。

「子供がわーっ子供が………いない!」

 かなり興奮していて聞き取りにくくが?

 乗務員も来ていて事情を聞いている。


 私はふっとおもった!


 そして……「えーーーーっ!」

 

 「岡山、岡山です。お忘れ物ないようお降り下さい」新幹線のドアが開いた……ひとが入れ替わりで入ってくる。

 その中に警察官もいた。


「まさか、あれって?」

 そしてドアやが閉まり、新幹線はゆっくりと走りだした。この状況では新幹線は止められないだろうろう。


 あの、あの女性だ!


 私はすぐに上昇し、辺りを見回した。

 女性は駅の西口を出て真っ直ぐに大通りに出、路面電車に飛び乗った。赤ん坊を大事に抱えている。

「危害を加える様子は無いみたいだな」

 むしろ大事に扱っている。

「子育てに慣れている気がする、子供を育てた事がありそうだ」


 岡山の路面電車は、東山行きと清輝橋(せいきばし)行きの2路線がある。

 女性は清輝橋行きに乗り込んだ。柳川までは同じ区間だが柳川から分岐をする。柳川で降りることは無く清輝橋終点まで乗車した。

 清輝橋の駅を降りると南に向かったこの(辺りに住んでいるようだ)

 左手に小学校がありあるマンションに入っていった。

 訳ありのようだが、しかしこれは誘拐であり犯罪である。


 当然、世間では大騒ぎになっていた。


 赤ん坊が行方不明で、本来なら誘拐の場合は報道規制が掛かるが、現場が新幹線の車内であったため目撃者も多くSNSで拡散してしまったようだ。

 

 事情はどうあれ、これは早く知らせなくては……


 戻らなければと空高く舞上がった。


 病院のベッドからヒョイと起き上がる。

 どうやら死亡判断される前に戻れたようだ。

「やあー!」

 私は手を上げそこにいる人物に声を掛けた。

「ひえぇぇぇーーーーっ!」悲鳴をあげる看護師の姿がそこにはあった。


 どうやら新神戸駅から神戸の病院に運ばれたようだ。

 

 死んだと思っていたらしく医師も不思議そうに首を何回も傾げている。

 

 そこに現れたのが今後長い付き合いとなる人物、毛利吾朗(もうりごろう)どこかで似たような名前だが、大阪府警捜査一課の刑事である。


 赤ん坊が誘拐される瞬間が防犯カメラに写っていたらしく犯人は新大阪から新幹線に乗り込んだようだ。

 その後、足取りが分からなくなったと聞いた。


「加納さんお身体はいかがですか」

 私に警察手帳を見せながら「大阪府警の毛利といいます、お話しを伺ってもよろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

 女性の居場所を言ってもいいが、それだと幽体離脱のことを説明しなければならない。

 現実的な日本の警察がまずそんな話しを信じるはずが無い。犯人と間違いなく疑われる。

 どの様に伝えるべきか。


「加納さんは東京を9:20発のぞみ121号博多行きに乗車したのは間違いないですか?」

「どこ行きかは知りませんが、9:20に東京駅から乗ったのは確かです」

 毛利刑事は手帳を確認しながら尋ねてくる。

「東京から仕事の帰り……作家さんでしたね」

 何を聞こうとしているんだ!

 この人物はなかなか確信を言わず、相手の様子を見ていくタイプのようだ。

「赤ん坊が行方不明になったのはご存知ですか?」

「……」

 どうしようか、言うとおかしな話しになりそうだよな、あの時私は死にかけていたからな。

「まあ、そうでしょうな〜、あなたは意識が無い状態で発見されたのですから」

 だったら何故聞くんだ?

 何を感じているんだ?


 毛利刑事は40代ぐらいで、身長は175㎝ぐらいか!体は筋肉質、髪は短髪で紺のスーツ身なりはきちんとしている。顔も西島秀俊似のイケメンである。

 私より一回りも下の様だが、かなりのやり手ぽい!

 まあ、私の見立てはよくハズレるが……


「ただ、少し気になりまして……同じ時刻に同じ車両で起きたものですから、まあ意識を失う前に何か覚えている事は無いかとお伺いしたのですが、どうでしょう?」

 (まあ、全部知っているんだけど)

 信用出来る相手かどうかも分からない初対面である。手の内は見せないほうが良さそうだ。

「特に変わった様子は無かった気がします、赤ちゃんが居たのは知ってました時々泣いてましたから」

「その後はご存知の通り、気を失ってましたので」

 毛利は手帳を胸にしまうと「ありがとうございました、また、思い出したことがありましたらお願いします」

 そして、名刺をわたされた。

 毛利刑事はお辞儀をし出ていった。


 いやはや、どう伝えるかだ?

 毛利刑事は何かを感じている。

 私が何か絡んでいる事を!


 テレビのワイドショーでは、各局行方不明事件を扱い報道している。


 私は翌日病院の許可が降り退院した。

 検査をしても異常が見つからなかったのだ。

 私が病院を出るまで、医者は不思議がり晴れない様子であった。

 まあ、この現象は本人すら理解出来ないのだから、仕方がない。


 岡山の自宅に戻り書斎にいる。

 さあーこれからどうしようか?

 担当の田中と打合せをし、幽体離脱を小説にする話しでまとまったが一向に筆が進まない。

 当然である、興味があちらに向いてしまうといても立っても居られない。自分で言うのも何だがそれが作家、加納慎吾である。


 自宅で幽体離脱をしても当分騒がれることもないだろう。

 ひょいと体から離れ宙に舞う。

 大分慣れた感がある。


 さあ、見に行こうか!




ありがとございます。

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