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第96話 麒麟

「…………ッお! フィーシアも頑張ってるみたいだな」



 カエの周囲には生存を確認できる個体は残っていない。


 ただ遥か遠方では、近接戦に持ち込む前にフィーシアに預けたバーミリオンが宙を舞、火を吹く姿が確認できる。あれは、アタッチメントに付属させた『浮遊装置【ドローン遠隔】』によって宙に浮き遠隔で操縦する機能で、操縦者は街でサポートに徹するフィーシアが担当している。



「——フィーシア? そっちの状況は大丈夫? 問題ない?」

『——マスター? こちらフィーシア……問題ありません』



 そして、余裕ができたカエはシステムメニューから通信を開き、手前に画面を出現させて喋る。すると数刻待たずにフィーシアからの返答が入った。



『城壁から目視できる敵勢力——そのほとんどが敗走に踏み切っています。それでも数体は、街を目指す動きを見せましたが……私がバーミリオンの遠隔操作で多数撃破しました。数匹撃ち漏らしはありますが……街に待機した者でも取り囲めば脅威は無いかと——』



 フィーシアは現状を簡潔に語った。その内容からはカエも目視で確認したバーミリオンの戦果が告げられる。

 フェーズ3にあたって、相対した群れの総数は約1000体——だが……決してこの全てがカエ目掛けて襲って来ていたわけではなかった。フェーズ2や、フェーズ3の初動で大きな蹂躙を披露したカエだったが……魔物の群れは、この現象に『カエ』を脅威とし、大多数は一斉に脅威を排除しようと動いていた。魔狼は少なからず頭の良い生物だ。群れであっても、カエが脅威だという事実を、なんらかの方法で仲間へと伝え、群れ全体で連携をとっていた。そこで、カエに実際攻め立てたのは大凡6割——後、残りは左右を抜けて街に迫ろうとしていた。が——それでも、カエが暴れ過ぎた事で更に1割の被害を広げ——3割を取り逃がしたことになる。が……それでもまばらとなって攻める魔狼は、フィーシアが操るバーミリオンの餌食となり1割を倒して見せていた。



「——そ! じゃあ、あとは“丸投げ”でいっかな?」

『そうですね。()()暴れ過ぎたきらいがありますし、この辺で撤収は最善だと、私も考えます』

「……ごめんなさい。暴れすぎました」

『——ッ!? も、申し訳ありませんマスター! マスターを責めるつもりは……マスターの活躍、カッコ良かったです!!』

「ありがとうフィー。慰めてくれて……」



 そして残る魔狼は2割——ただ、これはあくまで目視による大凡の数にしか過ぎず、実際はもう少し多い気はする。だが……ここまで数を減らした群れであるなら……残りは街の連中に丸投げでも問題はなさそうだ。3000の群れと、200の群れとでは脅威が歴然として違う。カエも後のことは、本来スタンピートに対処するはずだった者に返すつもりでいる。

 カエがここまで大暴れしたのも、“早急に”事に決着をつけるためだ。カエの存在が周知されるよりも前にこの場から消える算段は、最初から決めていた。まぁ……“一部の者”には誰が蹂躙コレをやったかは既にバレているだろうが……それは、想定済み——寧ろ、後処理は委ねるつもりでいる。



「そういえば、フィーシアちゃん? ()()はまだいる?」

『え〜〜とぉ……はい、近くにいます。何事かブツブツ呟いていますが、私の後ろの方に……』

「うん……なら、ちょうどいいや。彼に言っといて貰いたいんだけど……」

『……はい、なんでしょう?』

「“シュンちん”に伝言をお願いしといて……“保証”とだけ伝えればいいから……」

『——ッ! 分かりましたマスター』

「私も撤収するし、後で落ち合おうか」

『了解しました。伝言を伝え終わりましたら私も孫猫亭(集合場所)に向かいます』

「——ん、じゃあ後でね!」



 カエはコレだけ伝えてフィーシアとの通信を切った。


 カエの言う変態とはアインのことである。

 レリアーレの事前情報では、ギルドの特殊監査官【シュレン】も、スタンピートの処理に参加してるとのことだ。変態も少なからず関係を持っている。なら、彼に伝言を頼めばシュレンには伝わるはずだ。内容も「保証」だけで十分——「秘密は守って」貰えることだろう。


 そもそも——



「大暴れしちゃったけど……シュンちんは、これを想定してるだろうし。これが予言通りってことでしょ?」



 カエはこの場に誰も居ないにも関わらず言葉を口にした。そんな彼女の瞳には自身が引き起こした爪痕を捉えている。黄金の草原が見るも無惨に焼け焦げ、割れた大地を——だ。言葉を漏らしたのもこの惨劇が原因か……

 些か、やり過ぎだとも思えるが……元を辿れば、これはレリアーレを通じて伝わった「予言」の通りなのだとカエは考えている。自分が引き起こしておいて「予言」の所為だと片付けるのは無責任ではあるが……それでも、あくまで人命は守られ、3000の群れを200弱まで減らしてみせている。これは預言の巫女の言う『事がうまくいく』の結果ではないのか——と、考え……いや、もうカエはこの事を考えるのをやめていた。



「さてと……武器は回収しなくちゃなぁ〜〜と……おっと1つ発見〜〜ん♪」



 後の事は全て“シュレちん”ではなく、シュレインに委ね(丸投げ)てしまおう——そう思考を固めたカエは、撤収作業に移る。戦場にばら撒いた武器を回収するべく歩き出した。

 敵の脅威度がわからなかった為、フィーシアには多くの武器を周辺にばら撒いてもらっていた。ただ、思いの外魔狼の脅威は低く、大きな魔物でもフェーズ2に目撃した10ほどの巨大カマキリだけで……最も簡単に蹂躙してしまった。寧ろやり過ぎてしまった程だ。フェーズ3でも、四つの武器の戦技だけしか発動してなく、周囲には更に数機の武器が転がってしまっている。


 ちょうど少し歩いた地点でカエは1つ武器を回収した。





------ウェポン <weapon>

  >>> 変形式両剣ロイロ《over the limit》Lv.10


戦技【デスペラード】

効果……武器を変形させ、形態に準じた強い一撃を放つ。攻撃力上昇。武器変形速度上昇。属性値【光】UP。効果時間60秒。デスペラード発動中にコンボが途切れると強制的に戦技効果を失う。消費EP500。クールタイム60秒(ただし、クールタイムはコンボが途切れる時に発生するものとし、効果時間60秒での喪失時はカウントされない)。





 【姫雷神ひらいしん】で焦がした灰色の大地のおかげで見つけ辛くなっていたが、カエは黒光する刃の輝きを見逃さず1つの武器を拾い上げた。

 【変形式両剣ロイロ】——武器柄の天地に、大きな対象の黒いブレードのついた武器……一種の両剣と言うヤツだ。2つの剣を柄同士でくっつけた見た目をしているが……武器は形態変化で柄が独立し、双剣としても使える。正直、現実での実用性は皆無だろうフィクションだけの存在。厨二心をくすぐるロマンを求めただけの武器だ。



「で——後は? 何個あるんだ? マップを見れば……ッうわ! あと9!? フィー……10個もばら撒いたの!? 戦技を多様できるのはいいけど……これ回収めんどいな。フィーシアに回収手伝って貰えばよかっ……いや、あまりフィーを頼り過ぎるのはよそう。あまり頼ってばかりだと、ダメなお兄ちゃ……じゃなくて、お姉ちゃんになってしまう」



 カエは片手に両剣ロイロを持った状態で簡易マップを開くと——周囲には9つの黄色の点が写っている。フィーシアにばら撒かせた武器の場所だ。

 武器回収をあと9回もしなくてはいけない現状に煩わしさを覚えつつも、カエの力の一端を放置するわけにもいかない為、渋々と再び歩き始める。

 この時、灰色の大地ばかり視界に写していたカエは、少しは気でも晴れるかと思い視線を上へと移して空を眺める。黄色の点まではまだ距離があったためにカエに見られた、なんて事のない一動作だが……この時……



「——ッん?」



 視界に変なモノが映り込む。



「なんだあれ? カミナリ??」



 この時——カエの視界に映るのは青空。その空中の一箇所に、紫のカミナリ——紫電のような対流が、渦巻いている姿を捉えた。空には薄々とした白曇は確認できるが、雷雲の類は1つとして見当たらない。明らかに異常な光景。



「……?」



 そして、暫し——カエは目を細め、その紫の渦を眺めていると——



「——ッッッ!? マズイ——ッッッダイヤモンドダスト!!」



 突然——カエ目掛け稲妻が降り注ぐ。



「…………ッ……あ……あっぶねぇ〜〜……」



 これをカエは、システムを発動させることでギリギリ防いだ。頭上には、ダイヤモンドダストの破片を大きく多重に重ね、障壁の正面は“攻撃”を防ぎきった後にも関わらず、バチバチと、残留紫電が纏わりついていた。



「——ッ……なんだコイツ? どこからでてきた?」



「——キュルルル……」



 そんな、障壁展開さなかのカエは——打ち付けたカミナリで発生した白煙が晴れると、自身の正面を視界に捉えて眉を顰めた。

 気づくとそこには、淡藤に輝く毛皮を持った獣の姿があり、唸るような甲高い鳴き声を発している。

 カエが攻撃を受ける直前までは、その獣の姿はなかった。まるで紫電と共に天から舞い降りたかのように一瞬にして出現した。四足歩行の馬のような形状。大きさは10メートルはなさそうだが……馬の範疇を逸脱した巨体である。淡藤色の体毛が風に靡く度にパリッと紫電が走り波打って輝く。神秘のベールに包まれた獣がそこに居る。



「ふむ……さっきの狼とは一線を画した存在だってのは一目で分かるな。綺麗な毛並みで神秘的——さながら神獣か……『麒麟』と言ったところか?」



「——ッキュラララ!!」



「——ッ!?」



 唐突の攻撃にこそ慌てたカエだったが、無事防ぎ切った事で冷静にその獣を観察していると……またも突然、獣の口元に紫電が収束する兆候を見せる。次の瞬間、丸く膨らむ雷球が形成されたかと思うと一瞬で弾け、カエ目掛けて光線が飛ぶ。

 目の前の獣に言葉が通じるか分からないが、カエの賛美がよほど気に入らなかったのか突如として厳戒態勢で攻撃に打って出てきた。



「——ッと、なに? カミナリの光線?! 演出が派手だねぇ〜さすが異世界。あれも魔法の一種か? でも、俺のチートには()()()るんだよ!」


 

 カエは獣の攻撃を体を仰反るようにして回避する。光線速度には驚く部分があるが、それでもカエの異世界特定チートは、その速度をも容易く目で追う事が可能。余裕で回避する。

 この時——カエは後先考えずにスレスレの回避パフォーマンスを披露したが、攻撃を観察すると『雷』を纏った紫の光線だと窺い知れる。これがもし本物のカミナリを模した攻撃なら、もしかすれば光線はカエに引き寄せられていたかもしれないが、幸い——あくまで線は一直線上に光差す性質だったようだ。



「明らかに、攻撃の質が狼とは性質も毛色も違う。ここから“BOSS戦”ってことか? ふふふ……いいじゃないか! 楽しくなってきた!!」



 光線が過ぎた後——カエは上体を起こしながら、その顔には不敵な笑みを覗かせている。本来、彼女が望むものは『戦い』ではなかったはずだが、今の表情は明らかな『喜び』に満ち、楽しんでさえいると感覚で分かる。


 いや——


 彼女が楽しんでいるのは『ゲーム』なのかもしれないがな。



「狼だらけの“BOSS戦”が、なんで『麒麟』なのかは“解せぬ”けど——まぁいい……少しは骨のあるバトルも経験しとかなきゃねぇ〜〜早急に片付けるよ!」



 カエは起き上がると同時——地面を思いっきり踏み締め身体を急加速させ駆け出す。



「——起動……ッ【デスペラード】!!」



 そして片手にした両剣ロイロの柄を両手で握りしめて、声高々と宣言する戦技。すると金色の輝きを刃が纏い、ガシャン——と機械同士の擦れた音を奏でて、これを2つに分解。カエの両手に一刀ずつに分かれた短刀が握られる。


 

 【変形式両剣ロイロ】——形態『双刀モード』



「最初に攻撃してきたのはソッチだからね。斬らせてもらう!」


「——ッ!? ッッキュ、キュラァア!!」



 双刀を握り絞めた状態で獣に急接近を試みるカエだったが……相手もタダではやられまいと、接近してくる少女に対し、前足を持ち上げ踏み付ける姿勢を形成する。だが、決してそのまま踏み潰そうとしているわけではない。その表れに、獣の左右には浮遊する2本の紫電でできた槍が創造されており、先ほどの光線と性質としては似た印象を受ける。



「——キュアゥ!!」



 そして獣は1つ大きな呻きを漏らし、前足を地面に力強く踏み締めると、紫電槍もそれと連動してカエ目掛けて高速飛来する。カエも相当な速度で接近しているのだが、それに対応する獣はカエの動きに順応している。

 

 だが……



「……甘いよ。こい、ダイヤモンドダスト——」



 地面スレスレをカエの速度に合わせて青い輝きが後方より滑り込む。カエは駆ける歩幅を輝きに合わせ、紫電槍と衝突する直前に輝き——ダイヤモンドダストの破片を踏み抜いた。すると、カエの体は破片に弾かれ空中を錐揉み回転し2本の紫電槍を縫うように合間を抜ける。そしてもう一枚……飛び跳ねた先にあった破片を再び蹴って今度は地面に対して急降下。獣の懐に潜り込む。



「——ッ!? キュア……」



 その一瞬過ぎるトリッキーなカエの動きに、身体を瞬間でビクッ——と跳ねさせ、呼応して獣の喉に呻きが燻る。



(ほほう……駆けて来る速度には反応できたけど、コレ(ダイヤモンドダストによる立体駆動)には流石に驚くか……)



 その獣の様子に、カエはこれを『驚愕』と受け取った。カエに獣の表情を読み解くスキルは持ち合わせていないが、それでも感覚で伝わってくる。明らかに獣にとって意表を突いた動き(立体駆動)。カエはこの隙を逃さない。

 落下した段階の低空姿勢のまま両手に握る短刀を、腕をクロスさせるように構える。

 狙いは足だ。カエの目の前には淡藤の毛皮に包まれた前足が見える。そこをに狙いを定めるように睨みを効かせた彼女は、足に力を込め、そして……



「機動力を削ぐ、コレ戦闘の城跡〜♪」



 獣の前足目掛け飛び込み。



「——前足ッ!! そして、欲張って〜……」



 黄金の輝きを放った両剣を獣の足に斬りかかる。その時カエの体はかなりの速度で獣の下を滑るように潜る。地面を踏み蹴った足に相当な力が加わっていたのだろう。到底、人間の出せるスピードではない。


 一瞬にして両剣ロイロを振り抜き、前足を通過——



「……更に〜後ろ足ッッッ——!!」



 そのままの勢いに乗じて回転を加え、ついで背後足にも斬りかかった。


 カエの体は半時計回りにスピン。カエから見て後ろ足の右を通過してやがて獣の後方で地面に足裏を擦り、摩擦で体のベクトルを抑制し止まる。この間、遠心力によって、両剣ロイロはカエの身体の右に二刀とも構えた状態。殆ど、どさくさ紛れの回転斬りだが、獣の腱があるであろう蹄と関節の間——繋ぎの部分を、左右両足を薙いだ。

 


「…………」



 僅か数秒の合間に起こった事だ。カエは体を止める時に発生した土煙越しに獣を観察する。正直、一瞬過ぎる攻撃で理解はしてても、不安をどうしても感じてしまう。黙って、煙が捌けるのを待つ。



「…………?」



 ただ……ここでカエの脳裏に不可解さが張り付いた。目にした光景から、すぐさま自身の短刀を握る手を眺め、剣を何度も握り直して腕に伝う感覚を確かめる。



「あれ? おかしいなぁ……斬った……よね? 俺——」



 カエは、確実に獣の4本足——足首の部分を斬った筈だった。だが、そうなると遠くに見える獣は、倒れている筈なのだ。だが……煙越しに獣の身体の上部が見えた段階から、異様な光景だと分かってしまった。



「——キュララ?」



 そして、獣は当然のようにゆっくりと振り返ると……カエを睨む。その姿からは「何かしたか?」と——そう、カエを嘲笑うかのように自然な動作である。



 やがて……



 砂煙が完全に晴れると……獣は……





 何事もなかったように淡藤に輝くスラットした足の状態のまま地に立っていた。









「はぁぁ〜? どういう事だ? 確実に足は斬った筈……え? 再生?? ……は、あり得ないのか。凄く異世界チックな考えだけど……再生なら、周りに血が飛んでいないのはおかしいよね??」



 カエはあまりの出来事に獣を観察する。


 凄く悠長ではあるが……



「——キュルル……」



 ただ獣は、カエの今し方の一刀速に余程警戒しているのか……呻き声を上げるだけで、攻撃に撃って出てこない。あちらも、カエのことを観察しているのだろう。


 獣とカエの間に沈黙の時が流れる。


 しかし……



「クソ……考えたってダメだな。異常事態だ。フィーシアに連絡だな」



 いくら思考を巡らしても、獣が無傷だというトリックの解明とはならない。

 カエのゲームパワーの通じない手合いの出現に、すかさず彼女は仲間のフィーシアに連絡を取る姿勢を見せる。

 現状、相手の攻撃に脅威は感じていないが、攻撃が通じない……つまり「倒せない」となるのは問題だ。あの(獣の)力が異世界ならではな能力か……はたまた魔法由来によるイリュージョンなのか……これを判明させない限り勝利はない。

 少しでも、安全、かつ効率を優先するなら、ここはフィーシアに援護を依頼するのは当然の思考だ。彼女の知恵を借りれば、もしかすれば攻略の糸口が見つかるかもしれない。それに、まだ彼女の隣にはあの“変態”も居る。彼ならこの“獣”について知っている可能性だってある。カエの行動選択は非常に合理に基づいていた。


 だから、ここは獣が攻撃に打って出てくる前に、彼女 (フィーシア)と連絡を取ろうと、カエは通信画面を開いた。



「——フィー! フィーシア! ごめん、ちょっと問題が発生した!」



 彼女は画面に対して声を荒げた。優秀なサポーターに必死に呼びかける。


 だが……



『…………』

「——フィー? フィーシア!?」

『…………』

「おい……ウソでしょう? フィーシア!!??」



 カエがいくら必死に呼びかけても、画面からフィーシアの声が返ってこない。



「……一体なにが……クソ、何か問題が発生、て——ッッッ!!??」



 カエは、突然のことに混乱する。おそらく、これほど取り乱したのは異世界転生を果たしてから初めてなのでは——? そう思えるほどにカエの思考は掻き乱された。


 だが……その時——



「——ダァああ!! 邪魔だよオマエ——!!」

「——キュラァアア!!」



 カエの混乱を読み取ったのか——隙を見た獣は、天高く跳躍すると、カエ目掛け紫電を纏って落下する。



けたたましい落雷音と共に……辺り一面を再び砂煙に包まれたのだ。






——“BOSS戦”開始——






 





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