表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

後には蟲と血が残った

「お、お前! どうやって移動した!? お前ら二人ともさっきの奴らとグルか!?」



 武器を持っている3人のうち一人、拳銃を構えている男が叫ぶ。


 他の二人は武器を構えて此方を睨みつけているのが一人、もう一人は困惑している様子だった。



「さ、さっきのやつとか、グルとか、何のことかわからないんだ! た、頼むから落ち着いて……せ、説明してくれ」


「ああ、勿論いいよ。 僕の気まぐれに感謝するといい」



 フードの男がそう言いながら指を鳴らす。


 パチンと乾いた音が鳴ると透けている人影が5人現れた。


 その人影は武器を構えている男達とキャンプ場で出会った兄妹達だった。



「な、何だよこれ……」


「物語の主人公気取りのバカが三人と可哀想な兄妹二人組がとある研究所に迷い込んだ」



 誰の疑問かもわからない呟きを無視してフードの男は芝居じみた言葉遣いで語り始める。


 男の言葉に反応する様に透けている人影が映像を映し出しているかの様に動き出した。


「兄と妹は此処にいる人形によって離れ離れにされてしまった。 その間そこにいる主人公気取りの馬鹿は何も出来ずに突っ立ているだけだったとさ。 ……困ったな、彼らが余りにも間抜け過ぎて特に語る内容がない」


 フードの男の語りと共に透けている人影が二人追加される。


 新しく出来た二人は兄妹を別々の部屋に連れ去ってしまう様子が部屋に映し出された。


 妹は自分から見て中央の扉に、兄は左の扉に押し込める様に連れていかれるのが見てとれた。



「て、てめぇ!? お、俺たちが無能だとっ! 俺たちは誰も知らない様な化け物を殺したことがあるんだっ。 他の奴らとは違う……俺は特別なんだっ……そんな俺にむ、無能だとっ!? ふ、ふざけやがって……ふざけやがって!!!」



 銃を持った男は酷く頭に血が昇っている様で怒りに身体を震わせていた。


 その様子に気づいた仲間達は落ち着かせようとするが一歩遅かった。


 何かが炸裂する音が部屋の空気を揺らした。


 それが銃声だと理解するのにそう時間は掛からなかった。


 弾丸はフードの男に当たったのか、フードの男の身体が揺れる。


 その拍子でフードが外れてしまった。


 そうしてこの部屋にいる全員が奴の顔を認識してしまった。


 男の顔は甲殻で覆われており、額には短い触覚が生えていた。


 彼の呼吸と共に甲殻が浮き沈みし、躍動していた。


 まるで昆虫の頭部にそっくりだが、眼球は人間のそれと同じ造りなのだが、目蓋が存在せず、ギョロギョロと目を動かし此方を見据えていた。


 口元はよく見ると人間の歯が甲殻に埋め込まれている様に露出しており、その不気味な口元で謎の言語を短く唱えた。


 その瞬間、銃を撃った人間が一瞬硬直する。


 次の瞬間には彼の頭部が弾け、身体の中から無数の蟲達が身体から這い出てきた。



「う、うわあぁあ!!! てめぇええ! よくも(あつし)を!!」


「よ、よせ! 止まれ!」



 ナイフを持った男の静止も虚しく、警棒を持った男は蟲の頭部を持つ男に肉薄する。


 男の持っていた警棒は鈍い音を上げながら蟲の頭部を打ち据える。


 その瞬間、警棒を持った男の頭部が弾けてしまう。


 勢いのある血の水音を上げながら男は倒れ、後には蟲と血が残った。



「あ、あぁぁ……」



 ナイフを持った男は尻餅をつく様に倒れ込み、力無く嘆いていた。


 この時になって自分はやっと此処が日常のそれでは無いと理解し始めたのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ