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霧の中

 夜、テントで寝袋にくるまっていた星野一人(ほしのかずひと)は強烈な湿気の不快感を覚えて目を覚ます。


 不思議に思い、ライトを片手に外を出ると一面が真っ白な濃い霧に包まれていた。



「な、なんなんだ……これは?」



 目の前の濃ゆい霧を目の当たりにして記憶がフラッシュバックする。


 星野一人(ほしのかずひと)はキャンプに出掛ける前にこの辺りの一週間の天気を調べていた。


 調べた結果、雨は勿論、霧なんて起きない事を確認していた。


 それにこの辺りでここまで濃ゆい霧が出るだなんて聞いたことがなかった。


 ポケットからスマホを取り出し、改めてこの辺りの天気を調べようとしたがスマホは圏外になっていた。



「おかしいな……」



 昼間は普通に電波が通っていたのだが、何故か圏外になっていた。


軽くヤケになりながらスマホを振ってみるが、電波が繋がることはなかった。


 スマホから目を離し、辺りを軽く見渡すと霧の奥から電灯の灯が見えた。


 距離は数百メートルも離れてはおらず、明かりの大きさから何か建物の明かりだということがわかる。


 おかしい、余りにもおかしすぎる。


 今日、自分はこのキャンプ場を歩き回った時にはあんな建物なんかなかったはずだ。


 少なくとも自分のテントの近くに建造物はないはずだ。


 突如として霧の中から現れた建物に自分は言い知れない不気味さを感じる。


 しかしそれ以上に今ここにいることが危険な様に感じた。


 霧の中から幾つもの視線が私の臓腑に直接鋭いものを突き刺してくる様だった。


 自分はその視線から逃れる様にその建物の電灯の灯に向かって歩いていく。


 数メートル歩くと自分のテントは振り返っても見えなくなってしまう。


 そうして灯りに向かって歩いていくと建物が目の前に現れる。


 建物はそれなりに大きく、窓ガラスが沢山付いており、住居というより、研究所や会社の様な印象を受ける。


 丁度よく建物の入り口にたどり着いたのか、ガラスで作られた両扉が目の前にあった。


 不思議とガラスで出来ているのに中の様子は全く見えなかった。


 まるで真っ白な灯りでガラスを塗り潰したとでも言うように、全く中が見えない。


 すぐ隣の窓ガラスに目を向けるが、他の窓ガラスも同様に中の様子がわからなかった。


 正直、中に入るのは怖い。


 しかし、それ以上にこの霧の中にいるのは良くない気がした。


 この霧の中にこのままいると、自分の身体が霧の様に霧散して溶けてしまう様な、そんな猛烈な不安感が襲いかかってくるのだ。


 自分は霧から逃げる様に扉に手を掛けて、建物の中に足を踏み入れた。

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