表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

オープニング

 地獄とは死んでから行くものだと思っていたがどうやらそうでもないらしい。



「あ、あちぃ……」



 力無く、項垂れながら呟く。


 都内の夏は余りにも暑く、夏の日差しがアスファルトによってパワーアップしてこの身に襲いかかってくるのだ。


 それはまるでオーブンに放り込まれてるような感覚で気分は灼熱地獄といった感じだった。



「昔は良かったという言葉を呟きたくなるよ」



 そう言いながら自宅でスマホを弄る。


 10年前の夏はここまで暑かった記憶はないのだが、自分の記憶なのでそこまで信用できなかった。


 きっと来年の夏も同じようなことを考えるのだろう。


 そうしてスマホを弄っているととある情報を目にする。


 それは郊外の山間に出来たキャンプ場の情報だった。


 自分の家から行こうと思えばなんとか行ける距離にそのキャンプ場はあった。


 なによりも目についたのはそのキャンプ場の気温で、この場所と比べると10度ほど低くなっているらしい。



「キャンプか……しばらくいってないな」



 自分、星野一人(ほしのかずひと)は今年で34歳になった。


大学生ぐらいの若い頃は趣味のキャンプに精を出していたが、仕事に就き始めた頃から余りキャンプをしなくなっていた。


 というのも長期休暇が入っても仕事を理由に行かなくなってしまった。


 キャンプ道具を閉まっているクローゼットを開く。


 中には綺麗に整頓されているが数年以上放置されていたせいか埃を被っているキャンプ道具がそこにあった。


 長期休暇に合わせて有給を取ったので休みはまだまだある。


 さらにキャンプ場は避暑地としては抜群。


 燻っていたキャンプ熱に火が着くのを感じながら、先程スマホで調べたキャンプ場に電話をかけた。


 数コール後に相手が出てきてアッサリと予約が完了した。


 自分は年甲斐もなくワクワクしながらキャンプ道具を引っ張り出して身支度をし始めた。


 私はこの時の気まぐれを一生後悔することになる。


 ここでこのキャンプ場に行かなければ仮初の平穏というものを享受できていたはずなのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ