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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
知っていた サラ

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いいなあ


 腕を組んで一度口を結んだ男が、ゆっくりと語りだす。

「だから、―― 終わって、おれが先にベッドをおりて、冷蔵庫に飲み物取りにいって、うしろから風が入ってきたから、ああ、窓開けたんだなって思ってたら、サラの声が『いいなあ』って聞こえてさ。 ―― 振り返ったら、タバコ吸いながら彼女が外見て、また、『いいよねえ』って ―――」

 

 ちょっと、うっとりするような声を、見上げた夜空の月にきかせるように。


「 ―― サラって、おれと違って、あんまり感情露出させないっていうか、子どものころからそういう訓練してきたっていうか、・・・とにかく、自分の気持ちを表現するのに、とっても慎重なんだよ。おれが好きだって言ったときも、あんまり反応なかったし、まあ、おれは彼女のそういうとこ、好きだった・・・。ああ、つまり、その、ふだん、サラがなにかを『うらやむ』とか、そういうことも、おれ、聞いたことねえわけ。それがさ、『いいなあ』なんて、ひどく感情こもった声でいうから、すぐに聞き返したんだ」



 ―― なんだよ?なんかほしいもんでも、あんの?

 ―― う~ん、そうね、たしかに『ほしい』のかも・・・

 ―― なにを?あんま高いとダメだけど、買えれば買ってやるって

 ―― ありがと。でも、買えるもんじゃないわ



「・・・ちょっと、おれには手が出ないって言われてるみたいで、腹たって、どうせおれにはローンなんて組めないからなって言い返したら、すっげえ笑って」



 ―― ローンなんてきっと扱ってないわよ!だって、えらばれるかどうかの問題だから

 ―― えらばれる?なに?懸賞クジ?それとも、なにかのオーディション受けたのか?



 渡した水のボトルに口はつけず、そのまま窓のふちにそれを置いた彼女は、いつものように優しい笑みを浮かべた。




   ―― わたしがいいなって言ったのは、バーノルドの殺人事件よ




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