確認作業
「おれとサラは、知ってるだろうけど、恋人同士だった。―― サラは身寄りがなくて施設育ちで、それでも、がんばって奨学金もらって音楽の大学にいけるほど、すげえ才能があった。おれなんて、どうにか高校を卒業して、そのあとずっとピザ屋で働きながら音楽やってたけど、いつまでたっても売れなくてさ。ずっと一緒にバンドやってたやつが仕事に就くとか言って、いきなりぬけちまって、そんで募集かけたのに、サラがきたんだよ」
「PCのメッセージリンクで?」
「いや。手書きの広告を、あちこちの劇場とカフェバー、楽器屋とかに貼ってまわった。バンド仲間の恋人が、音楽大にいってて、そいつが学校で貼ってくれた紙を見て、おもしろそうだからって ―― 」
――― ごめんなさい。あんたたちの曲は知らないんだけど、いいかしら?
「―― はじめておれたちの生の演奏きいて、目も口もまん丸にして、すごいおもしろい、って。 サラは、声楽科だっけ、歌を歌うための勉強してたんだけど、楽器はどれもできるっていうんですぐにはいってもらったんだ。・・・そんで、しばらくしておれとそういう仲になったんだけど。その三年後に、まさか、あんなことになるなんてさ・・・」
「彼女が『えらばれたい』って言ったのは?」
沈んだ声の男に事務的にジャンがきく。
「ああ。だから、つきあって一年ぐらいかな?いなくなる二年前ぐらい」
「そのころ、彼女にどこからか、何かの招待状とかが来てなかったか?」
「招待状?知り合いのバンドからチケットとかはもらったけど」
「何かのPCメッセージを見てなかったか?」
「サラはPC持ってなかったよ」
「バーノルドの森に彼女が行ったことは?」
「しらないよ。デートは家か、街中だよ。あんなとこまでは行ったことないね」
「じゃあ、どこで何してるときに出たんだ?『えらばれたい』って」
「ベッドだよ」
「ちょっと聞くけど、・・あんたたちのそれって、何か特別なルールとかあった?」
「はあ?なに、あんた、ひとのセックスのやり方聞くの趣味?」
「んなわけあるかよ。確認作業だよ」
どんな確認だよ、と苦笑する男に、バートがそのときの会話を正確に思い出すよう促した。




