№11- 失踪じゃない (サラの恋人の証言)
№11
A班の所属する、ガーバディ警備会社・警察要請本部にある調書をとるための部屋は、窓はないが、会社の接客室と同じつくりで、ニコルの妻であるターニャがデザインした家具がある。
彼女の家具のファンである社長が二コルを通して特別価格で入れてもらったものだ。この家具は、レイの店でもつかっている。
「警察と違うんだな」
そのソファに腰掛けた男の感想に、ジャンが笑う。
「先に言っておくけど、ここでのあんたは大事な証言者だからお客扱い。でも、終わったらすぐ警察に送るから」
「わかってるよ。・・・ところで、どうして警察官じゃなくてあんたたちが聞くんだ?」
「捜査の対象が違うんだ。サラの事件は六年前だから、今回の警察の捜査範囲には入ってない」
「よかったよ」
「・・・え?」
眼鏡をはずし、目元をぬぐう男は、警察じゃなくてよかった、と再度口にする。
「六年前、サラが行方不明になったとき、おれ、警察官に言ったんだ」
「なんて?」
「サラは、きっとバーノルドの連続殺人の犠牲になるって」
テーブルの向かいにいたジャンが、離れて座るバートをみながら質問する。
「どうしてだ?ただの失踪とは思わなかったってことか?」
眼鏡をかけなおし、テーブルの上で手を組み合わせた男は、思わなかった、と断言した。
ジャンが、手元のファイルをめくる。この男の当時の証言には、そんなことは記録されていない。見透かしたように男は組んだ手をひろげて笑う。
「本気になんて、してもらえなかったよ。―― おれは当時、二十代なかばをすぎても、売れない曲をつくって派手なパフォーマンスでガキたちを楽しませる『クソガキ』で、おれが言うことを丸まる信用してくれるのは、そのガキたちだけだった」
「つまり、警察官に信用されなかった?」
質問に、すこし悔しげに顎をひいた男が、まあしかたないけど、と己の現状を思い出したように口元をゆるめる。
「だけど、―― おれの言ったことを、ちょっとでも気にしてくれてたら、サラは死なずにすんだかも」
「何を、警官に伝えたんだ?」
「・・サラは、・・・あの、死体に憧れてた」
「あこがれて?」
「うん。『わたしもえらばれたい』って、そう言ってたんだよ」
「えらばれ?ちょ、ちょっと待ってくれ。―― 彼女、自分で、『えらばれる』って、そう、言ったのか?」
「失踪するどれくらい前の話だ?」
ジャンのあせったような声に、バートの落ち着いた声が重なる。
この本部まで自分を連れてきた男を見返し、手の甲で眼鏡をおしあげた証人は、かなり前だよ、と答える。
「―― 二つ目の死体が見つかって、あの森の事件が連続だってわかって、ひどくさわがれただろう?」
九年前。
新たな被害者であるドナ・ホーンの身体と、見つからなかったケイト・モンデルの頭部が見つかって。




