挨拶を、
ようこそ、舞台裏の世界へ。
そんなふうに迎えられ、訓練生となる。
一年間は、専門学校とは比べられないほど厳しさを仕込まれ、二年目に適正をみられ、配属先の希望を聞かれる。
ザックが入ったのは、希望していた警察要請部・強硬隊のA班だった。
アルファベットのA,K,M,J,と四つある班の頭文字は、クラスわけでもなんでもなく、会社ができた当初、各班の班長を務めた男たちの頭文字が、そのまま残っているだけだ。
―― そのままって・・どんだけ経ってんだ?
そんなことを考えながら、自室の引越しも兼ねて初めてのあいさつに行く。
今までは会社の寮にいたのだが、これから外に自分で部屋を探しに行くことになる。決まるまで、班室がある棟の、仮眠室に寝泊りすることになる。
―― 部屋も早く探しにいかねえとなあ・・・。
訓練生の終わりから刈らなくてもいいことになった、髪をなでた。
クセのあるそれが前まで嫌いだったのだが、こうなると、それさえも懐かしく早く取り戻したい。ようやく、指と指の間で毛先がくるりと丸まるようになったのを確認し、目の前のドアを叩いた。
はいれ、と返事があり、《班長室》とプレートが張り付いたドアを、すこし緊張しながら押す。
「本日付でA班に配属になりました、ザック・アシモフです」
これで階級をつけて申告すれば、軍隊だなと思いながらも、今まで仕込まれた型どおり正面を見たままのの挨拶をした。
「わお。ぼくなら、今のに星あげちゃうね」
「二階級特進おめでとう、ってか」
「 ・・・・・ 」
足元からの声に眼だけをおろす。
床にだらしなく座ってにやけた顔でみあげる男が二人。