証拠品
よろしくない場面あり。ごちゅういを
その部屋には、劇場の舞台で演奏していた人間たちとは別のたくさんの人間がいて、荒いノックの音に、その顔がいっせいに振り返って動きを止めた。
「なんだ?おまえら。この控室は関係者以外立ち入り禁止だぜ」
いきなり入ってきた二人の男をにらみ、舞台で客をあおるように怒鳴っていた男が、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
部屋の中は煙で白くかすんでいた。
テーブルの上にあるアルミホイルを、女たちが握りつぶす。男たちが吸っていた煙草をあわてて灰皿に強くおしつけ、いくつも立つロウソクの火をふき消した。
そこかしこでテーブルの上から白い粉が払い落とされた。
「なるほど。こりゃ目もつけられるわ」
ケンが締め切った部屋に充満する匂いに顔をしかめ、ドア横のソファでうっとりと手巻きの煙草を吸っていた男からそれをとりあげ、後ろのバートにわたす。
受け取った男はそのまま、さらにドアの外で待機する男へ『煙草』を渡した。
すると、嬉しそうな声をあげた口髭の男がドアから顔をのぞかせ、部屋にはいった二人へ笑いかける。
「なるほど、こりゃ今度おごらないとな」
白髪の目立つ黒髪を櫛目もきれいに整えた口髭の男は、ケンの名をよび指を立てた。
「証拠品に、それ以上素手でさわるなよ」
その言葉が号令だったように、男の後ろから制服の警察官が湧き、いっせいに部屋へとなだれこんだ。




