うんざり
ひとつ息を吸ってからルイよりさきに口にした。
「あのですね、ドナは、休日どうやって過ごしていましたか?」
「普段が忙しいから、ゆっくり寝てるって。当然だと思うわ」
「教会に行く習慣は?」
「そんなところで『神様』に感謝するほど、あたしたちは、お世話になってないもの」
「なるほど。妹さんの趣味は、何かありましたか?たとえば、演劇とか、絵を描く、とか」
「趣味?」
「同僚の方の他に、友達は?」
「友達?」
続けざまに聞かれることに、姉はとたんに不快そうな顔をつくる。
「―― さっきも言ったけど、あの子はまじめで優しくていい子だった。いい?うちは両親を早くに亡くしたから、あたしが十六から暮らしをたてるために働いていたのよ?昼も夜も。そのときあの子はまだ五つよ?預けられる親戚もお金もなかったわ。あの子はわたしが帰ってくるのをひたすら家のなかでじっと待っていたの。わたしがつくってあげた手袋の人形としゃべって。 友達なんてつくる時間なかった。学校に行っても帰ってきてすぐにわたしに代わって家の中のことをして、近所の御用聞きにまわって小銭を稼いで。毎日、毎日、それを渡してくれるよの?小さな手で、今日はこれしか稼げなかったって。―― 二人で身を寄せ合って、毎日を懸命に生きてきたわ!わたしたちには友達をつくる暇も、趣味なんてもてる時間もなかった!!それなのに、なんてことを聞くの!?まるでわたしたちがそんな暇を」
「わかりました。すみません。落ち着いてくださいホーンさん」
眼を見開き肩で息をするような女をジャンはうんざりした顔でとめ、ルイに眼で交替を告げる。
「遊びたい年頃に幼い妹さんを抱え、その妹さんも我慢して、二人おもいやってつつましく暮らしてきた。それはわかります。さぞ、大変だったでしょうねえ」
「え?ええ、もちろん」
ルイの同情に、女は冷静さを取り戻した。




