描かれた庭園
「――― ・・・なんというか、幻想的?」
腕を組み、壁際に並べられた油絵をながめ、ウィルがザックに意見を求める。
「おれ、こういうのわかんない。ニコルって、奥さんデザイナーなんだろ?」
「家具のな。まあ、美術展やら舞台にはおれもよく連れて行かれるけど、・・・うまいんじゃないか?」
それは彼女がまだ専門学校に入る前の日付で、淡い色の立方体たちが浮かび、鳥と背中に翼のある猫がおいかかけっこをし、さかさまになった子ども達がそれをみて笑う絵だった。
絵にはすべて年代と日付がはいり、年代順においてある。
一番最後を出して見た三人は顔を見合わせる。
「たしかに・・・最初と違って、いやな色の、なんとも気が沈むような絵だな」
代表したニコルが口にした。
高い塀に囲われた荒れ果てた庭園には、朽ち果てたような色のバラが咲き、その蔓は庭の真ん中に置かれた石像に執拗にからみついている。
「よし、ここが終わったら部屋の中も、もう一度確認作業だ」
作品をすべて写真に収め、屋根裏からおりて、部屋も探ることになる。
質素で簡潔なつくりの机の中には便箋や封筒はあるが、もらった手紙類はなかった。
本棚には美術関係の分厚い本といくつかの画集。
壁に取り付けられたコルクのボードには、観光地の土産で売っている風景写真のハガキがきれいにはられている。
「さっきの絵の庭園って、このハガキの写真から思いついたのか・・・」
それらも撮影するニコルがひとりごとのようにつぶやいた。




