ラジオ
ケイト・モンデルの捜索を願った美術学校の仲間は、一様に彼女の母親を悪く言った。
――― おれたちがいくらおかしいって言っても、とりあわないのさ
――― まるで、ケイトがいなくなったのは当たり前って顔してたわ
そのうち帰ってくる、騒ぐことはないと言い張る母親のせいで、警察に捜索願を出すまでに、かなりの時間がかかり皆悔やんでいるというのに、肝心の母親だけが、《この結果》は当然だというように、彼女が被害にあったことを冷たく表現したのだ。
『罪が、返ってきたのですわ』
「―― まあ、たしかに、心配してくれた友達に対して、感謝とかも一切なかったらしいし、葬儀も母親だけで済ましたっていうが・・・。うーん・・なんだかちょっと、おれたちの知ってる『聖堂教』とは、違うみたいだな。なんというか・・・教えがきびしいのか?」
「ニコルだって、あの暮らしと考え方にはついていけないと思っただろ?正直に言っていいよ。『教えがきびしい』とかいう問題じゃないよ。 エミリーも何かの宗教にはまってた可能性があるけど、これとは違うだろうね。あの母親は別の宗教にはまってるんだよ。―― あのラジオ見た?」
「ああ、あのひとつだけ現代的なやつか?」
おもしろそうに尋ねたウィルに、色のない部屋の中、ひとつだけ派手な色をしていたそれを思い出す。
金髪は前髪を払うように指を立てた。
「新興宗派の《星の輝き》のマークが入ってただろ?時計のほかにも皿とかいろいろ売ってるらしいよ。『星の恵み』っていう三十年以上前にできた宗派だけど、教祖がえらく金を稼ぐので有名」
グッズ販売で?と二コル。
「それもあるけど、とにかく寄付を集めて金を吸い上げるらしい。信徒には質素で最低限な暮らしを説いて、信徒の集まる教会の屋根も絵画も直さないのに、教祖であるカンドーラは豪勢な家を三つと車を十台以上持ってるって話だよ。ちかく、警察がその家に捜索にはいるかもね」
「脱税か?」
「違法賭博場を家の中でひらいてるって噂」
二コルはため息をついて首をふり、ザックは、そんなあやしいのに寄付してるせいで電話もないのかよ?とあきれながら、キャンバスをひっこぬいた。
 




