※ はしれ!
他の保安官が声をあげるのと同時に、おさえこまれた体をひねり払ったピートが、にげろおお!!と叫び、ジェニファーに突進してきた。
はじかれたように走り出すが、靴のせいで思ったほどの速度にならない。
だが、ピートに手首をつかまれ、全速力で走るしかなかった。
トレイシーはずっと先を走り、リッジの姿は見当たらない。
枯葉と泥に足をとられすべったところを、横からひっぱられて足首がおかしな曲がり方をしたが、体勢はもどり、走り続ける。
背後でイヌの鳴き声と、高い笛の音が響き渡った。
なにが肝だめしだ!こんな現実のほうがよっぽど恐ろしい!
走りながら自分のくちから悲鳴がもれているのを感じた。
目じりから涙もあふれる。
「さいあくだわ!さいあく!こんなのばれたら退学よ!」
こんなファッションをして真夜中にあそび、仲間との付き合いも大事にしながらも、きちんと学業をしてきた自分の苦労はどうなるのだ?
ななめまえを走る男の背中に文句をぶつける。
いったいどうしてくれんのよ!?あたしの学歴!!
いつまでも、こんな男たちとつるんでいるつもりもなかった。
もっと、知的な会話ができる、センスのいいグループだってある。
そう思い、そろそろちがう仲間をさがそうと思っていたところなのに!
うるせえだまれ!とどなるピートはそれでもジェニファーの手を離さない。
「学歴どころの話じゃねえ!!いいか!ぱくられたら、ムショ行きだ!!」
はしれ!はしれ!
もっとはやく!!
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