※ 聞いた話だけど
このあたりからよろしくない表現あり。ご注意を
「先にクスリ飲んでおく?」
そうすれば寒いのなんかすぐ感じなくなる。
「早いだろ。日が暮れてからが本番だぜ?」
「日が暮れて!?そんな時間までここにいるつもり?」
当然だろう、とリッジが笑い、暗くなればもっとおもしろいよ、とトレイシーが周りの景色をさす。
「いくらうっそうとしてても、こんなにはっきり見えちゃねえ」
「ねえ、肝試しって、・・・出るの?ほんとうに?」
ジェニファーのうかがうような問いに、出る、とピートが断言した。
「おれの知ってるやつが、前に夜、この森に入って、女とそのへんの木にもたれてヤッてたら、幽霊がでた」
「それって、ピート、あんたが見たんじゃないでしょ?」
「でも、そいつからじかに聞いた話さ。・・・鳥肌がたつような女の声がどこからともなく聞こえてきて、何かに足をつかまれた。そしたらこの高い木の上のほうを、白い影がゆらゆら動いていったんだ。・・・まあ、聞いた話だけど、本当だって」
へえ、とばかにした顔でトレイシーがジェニファーにうなずいてみせた。
ピートの女ぐせの悪さはとっくに知っている。
ヤッていて幽霊を見たというのもピート自身だろう。
意外なことにトレイシーはそのことで、心配してくれるのだが、ジェニファーはどうでもいいと思っている。
べつに、好きになっていっしょにいるわけではないのだから。
「でもそれじゃあ、幽霊なんだか、変な声をだしてしっぽにビニール袋をひっかけたリスなんだか、わからないわね」
ジェニファーの冷めた言葉に、トレイシーとリッジは爆笑し、ピートは、リスなんかじゃねえよ!とジェニファーの肩を突き放した。
「だいたい、声がしたのは白い幽霊とは別の方向なんだぜ?こんな所に夜中、女が一人でいるわけねえだろ」
「こんな所に夜中に忍び込んでセックスするバカもいるんだから、わかんないわ」
やりこめた、とトレイシーと目配せして笑ったとき、がさり、とすぐそこの茂みから男が現れた。




