あいつ大好き
「とりあえず、レイのおかげで、いろいろと問題が解けそうだよ。ありがとな」
「ほんと?ぼく、役にたった?」
レイは満面の笑みになる。
その頭をジャンが手荒に撫で、ケンがまたその背中におおいかぶさりながら、新人をみた。
「そろそろ遊びに行こうぜ。ザックが楽しみで待ちきれないってうるせえし」
「そんなこと言ってないよ」
「ほんと?どこなの?」
レイの、純粋な好奇心と屈託のない笑顔をむけられ、ザックはうまい説明が出てこない。
代わりにケンが説明をする。
「どうした?ザック?好きなんだろ?ステージからウインクしながら歌う女が、裸になってくのを、酒飲みながら見るのが」
「ああ、アメリの店?ケン、あれは裸になるんじゃなくて、衣装の演出だよ。わあ、夜のショーみるのひさしぶりだなあ。やったあ」
予想に反した言葉がレイの口からでたので、ザックは驚いた。
――― なんだ。普通に《そういう店》もいくのか・・
おかしなぐあいに安心した。
するとむこうで、レイがケンに強い口調で「ケン、アメリと、また始めないでよね」と、なにか注意している。
「おれはなにもしてないぜ?なんだよ、レイ?おれがアメリにかまうのに、やきもちか?それなら素直に言えって。自分だけ、かまってほしいって」
相手の細い顎下を指で撫でている。
「ちがうよ!あのね、ぼくはケンのペットじゃないんだからさあ!」
―― いや、これ、かんぜんに・・・・。
ジャンが二人をひきはなし、レイに早く着替えてこい、と命じる。
ここでケンが、ザックの視線に気付く。
「なんだよ?うらやましいか?」
「・・・いや、なんつうか、意外。・・・レイって、おまえの恋人なの?」
途端に声をあげて笑ったケンが、そりゃねえ、と片手をふる。
「はあ?・・・あんだけしておいて?」
あきれたザックにケンはにんまりとしてみせる。
「恋人じゃなくたって、あれぐらいかまいたくなるんだよ」
ひどく満足気だ。
ジャンがザックの肩を叩いて笑う。
「野生の動物になつかれたようなもんだ。レイはちょっと勘違いしていて、自分がケンに動物みたいにかわいがられてると思ってるけどな」
野生動物にたとえられた男は、部屋の奥をやさしく眺めつぶやいた。
「―― おれ、あいつ大好きだ」
今までみたことのない、穏やかな微笑みだった。




