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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
女王のダンス

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あいつ大好き


「とりあえず、レイのおかげで、いろいろと問題が解けそうだよ。ありがとな」


「ほんと?ぼく、役にたった?」

 レイは満面の笑みになる。


 その頭をジャンが手荒に撫で、ケンがまたその背中におおいかぶさりながら、新人をみた。

「そろそろ遊びに行こうぜ。ザックが楽しみで待ちきれないってうるせえし」

「そんなこと言ってないよ」

「ほんと?どこなの?」

 レイの、純粋な好奇心と屈託のない笑顔をむけられ、ザックはうまい説明が出てこない。


 代わりにケンが説明をする。

「どうした?ザック?好きなんだろ?ステージからウインクしながら歌う女が、裸になってくのを、酒飲みながら見るのが」

「ああ、アメリの店?ケン、あれは裸になるんじゃなくて、衣装の演出だよ。わあ、夜のショーみるのひさしぶりだなあ。やったあ」

 予想に反した言葉がレイの口からでたので、ザックは驚いた。


 ――― なんだ。普通に《そういう店》もいくのか・・


 おかしなぐあいに安心した。


 するとむこうで、レイがケンに強い口調で「ケン、アメリと、また始めないでよね」と、なにか注意している。


「おれはなにもしてないぜ?なんだよ、レイ?おれがアメリにかまうのに、やきもちか?それなら素直に言えって。自分だけ、かまってほしいって」

 相手の細い顎下を指で撫でている。


「ちがうよ!あのね、ぼくはケンのペットじゃないんだからさあ!」

 


 ―― いや、これ、かんぜんに・・・・。 



 ジャンが二人をひきはなし、レイに早く着替えてこい、と命じる。

 ここでケンが、ザックの視線に気付く。


「なんだよ?うらやましいか?」


「・・・いや、なんつうか、意外。・・・レイって、おまえの恋人なの?」


 途端に声をあげて笑ったケンが、そりゃねえ、と片手をふる。


「はあ?・・・あんだけしておいて?」


 あきれたザックにケンはにんまりとしてみせる。

「恋人じゃなくたって、あれぐらいかまいたくなるんだよ」

 ひどく満足気だ。


 

 ジャンがザックの肩を叩いて笑う。

「野生の動物になつかれたようなもんだ。レイはちょっと勘違いしていて、自分がケンに動物みたいにかわいがられてると思ってるけどな」

 


 野生動物にたとえられた男は、部屋の奥をやさしく眺めつぶやいた。


「―― おれ、あいつ大好きだ」


 今までみたことのない、穏やかな微笑みだった。




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