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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
女王のダンス

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贈られた場面


「『反乱』かどうかぼくはよくわかんないけど、結局、『王様』はひとりになってしまって、『王様』ではなくなるってことだよ」


「反乱軍が捕まえて処刑か?」

 ケンが親指で首の前を横になぞる。


「あのね、そういうのはないよ―― この王様は、どうやら月に住んでいるらしくて、女王に選ばれた女性に、『あなたはずっとこのさきも、おひとり月にとらわれて、《孤独》を相手に踊ればいい』って言われて、妖精の国を去ってゆくんだ」


「なんだ、追放か」

 残念そうなケンが水を飲む。

 

 ジャンが資料に目を落とし、かんじんなことを聞く。

「この、エミリーに贈られた一節って、どういう場面だ?」


 とたんに見合ったレイの笑顔が固まり、視線をはずしたまま説明しだす。

「えっと、・・・この言葉をおくられてる女性が、後にその『女王』になる主役の人なんだけど、その人が家を出る決心をして、外に出る場面だよ。―― 彼女は幼いころ両親に捨てられて、歳のいった男に拾われたんだけど、いつの間にかその男の妻として暮らしているんだ」


 ジャンがゆっくりと口をひらいた。

「それって、―― 彼女の意思と関係なく?」


「うん。ひどい扱いを受けてて・・・なにもわからないうちに、彼に奉仕することを教え込まれてる」


 ジャンが眉をしかめザックが舌を打って下品な言葉をはく。


「彼自身はすごく裕福な暮らしをしてるのに、彼女が好きだった食べ物をやめさせるとか、自由になるお金は絶対に渡さないで、外にも出さない、とか」


「なんだそりゃ?ああ、暴力がこわいのか・・・」

 不満げに身をのりだしたザックは困ったようにスツールに座りなおす。



 横で腕を組んでいたジャンが、確認していいか?とレイにきいた。


「その女性は、年よりの男に、『好きなものを辞めさせられて』、そいつに『奉仕』するような生活を送ってる?」

 うん、とうなずくレイの横で、ケンが「どっかできいたことあるな」とザックににやけた顔をむけた。


「・・・あ。もしかして、・・エミリー!!」


「おれもそう思った。でも、どういうことだ?彼女にこの芝居の真似をさせたかったのか?それで、いったい何に『招待』する?彼女はこの芝居のオーディションすら受けていない」


「だけど、『選ばれた』から喜んでたんだろ?役者志望なら、このセリフのことも知ってただろうしな。自分が『女王』になる役だって」


「うまくだまされたんだろうなあ」

 ザックが声を落とすのへ、頭をかきまわすようにかいていたジャンが、今日はもうやめだ、とファイルを閉じて立った。



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