反乱か
「でも、お芝居としては、王様の宮殿の舞台装置がすごいんだよ。 今までの地味で物の少ない妖精たちの暮らしとの対比で、まぶしいくらい! ―― すべてのお妃候補がそろって、話が山場をむかえるころ、王様が声高に、『これが自分のお妃候補だ』って、集められた妖精の女性たち全員を広間でおひろめするんだ。そこにひとりひとり登場する女性達は、前の様子が思い出せないほど、美しくきらびやかな衣装をまとって、りりしい顔つきで登場する。 生まれ変わった彼女たちがみんなそこにそろったとき、圧巻のダンスが始まるんだ。 それがすごいんだよー。ぼくはここがいちばん好き」
レイの笑顔に、ザックはおもわずつられて微笑む。熱の入った説明は続く。
「実はね、この先から女性達の反撃がはじまるんだ。王様は元々、一人を選ぶつもりなんてなかったから、集めた女性みんなを妃にするって宣言する」
「まさしく、『王様』だな」
「『うらやましい』っておれが言いかえておいてやる」
ジャンとケンのやりとりに軽い笑い声をたてたレイが姿勢をなおす。
「ターニャが、『ひどい女性軽視か、時代錯誤の王様で、よくあの男優が演じる気になった』って感心してたよ。―― 選ばれた女性達は、無理やり連れ出されたあと城の中にとじこめられているんだけど、捕まって連れてこられる人はどんどん増えてゆく。みんながそれぞれ事情を抱えているからそこでドラマが生まれる。そんな中でも結局、彼女たちはだんだんと理解しあい、団結してゆくんだ。その結果、みんなで一つの答えにたどりつく」
ここで一息いれるようにレイはグラスに口をつけ、こたえ?とくりかえしたザックに微笑んでみせた。
「うん、彼女たちのダンスに満足した王様が、全員を《めとる》って宣言したあとに、一人ひとり紹介されて、『王様』の前で自分だけの踊りをみせて、最後にうやうやしくこう言うんだ。『 わたくしはあなたと踊ることはできません 』―― ほかの女性もみんな、同じことを言う」
「・・・王様が、みんなに振られるってことか?でもそれじゃあみんな、暴君だっていう『王様』に何されるか・・・。それに、その女たちがお妃にならないんじゃ、ただしくは“女王の”ダンスにならねえだろ?」
「えっと、だから、《妖精の国の女王を決めるおはなし》って言ったでしょ?《王様の結婚相手を決めるお話し》じゃないんだよ。―― 妖精の国の中では、王様に対する不満がずっと蓄積されてたんだ。それは、王様につかえてきた妖精たちも同じだったし、この一件でそれが表面にあふれでてきた。そして、このお話の本当の主役の登場によって、そのみんなの意識は変えられてゆくんだ。―― かれらは今の『王様』の代わりに、お妃候補だったその一人の妖精を、『女王』として選び出す」
「おお、反乱か?」
急に、ケンが嬉しそうに身をのりだす。
レイは、そう言うのかなあ、と腕を組む。




