表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
女王のダンス

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

63/272

夢のない国

 

 代表してジャンが手をあげた。

「えっと、・・・それって、有名な芝居?」


「うん、ミュージカルだけど。・・・って、みんな知らない?もう、十年ぐらい続いてると思うよ。そうだ、マリアとも観に行ったし」


「え?おふくろと?まあ、今はそれはいい。そんなに長いことやってる芝居なら、きっと、ずっとオーディションし続けてるよな?」


 ジャンの興奮したような質問に、レイは首をかしげる。


「してるだろうけど、・・・でも、歌と踊りがメインのお芝居だから、ダンスのうまい俳優しか出られないみたい。主演はね、看板の女優さんが二人、交代でやってるよ。彼女達の代表作になってるし、演出家はこの二人じゃないとできないって公言してるみたいだし」


「ザック!彼女の受けたオーディションの一覧があるはずだ」


「今さがしてるよ!」

 端末をいじるが、『女王のダンス』なんて芝居はなかった。


 受けてないか、とジャンが残念そうに力を抜くが、どういう話だ?とケンが劇の筋を知りたがる。


「うーんと、ひとことで言うとね、妖精の国の女王をきめるお話だよ。 ―― たくさんのお妃候補を王様が集める」


「なんだ?『妖精の国』でもオーディションか」

 ケンが皮肉な笑みでつぶやく。


「もしかしてその芝居の中で、絵描きとか看護士とか音楽やってる女達が選ばれたりするか?」

 あまり期待もこめずにジャンが飲みかけのビールを振る。


 そんな筋書きならば、いまごろとっくに有名になっているだろう。


 そういう職種の女性はいなかったなあ、とレイのまじめなこたえに、ケンが笑う。


「まあ、『妖精』がそんな仕事するわけないよな。花のミツでも食べて暮らしてるんだろ?」


 いくぶんばかにしたそれに、レイが指をたてる。


「それがね、妖精もけっこう大変なんだよ。王様はわがままな暴君で有名で、自分の富をみんなに分け与えようとはしない。力はあっても人気はないんだよね。妖精たちの間にも、富と権力の差があるのが当然っていう設定なんだよ。・・・だから、女王に選ばれれば、同属の妖精も恩恵にあずかれるんじゃないかって、どの妖精も自分と同属の娘を必死に推す。 ―― 王様は王様で、自分の分身である《道化師》をつかってあちこちから気に入りの女性をさがしだす。 そこに妖精同士の争いとか罠とか入り乱れるし、王様はかなり強引な手をつかってその女性たちを手元に集める。 結婚してても関係なく、夫のもとからひきはがすように連れ出しちゃうんだ」


「・・そりゃずいぶん、いやな『妖精の国』だな・・・」


 ジャンの感想に、ザックも、夢のねえ国、と首を振る。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ