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A班ファイル ― 魔女は森では踊らない ― 前編  作者: ぽすしち
女王のダンス

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はじめまして



 すぐに誰かの笑い声がひびき、ケンが立ち上がり、「レイだな」と、子どものような期待のこもった声を出した。


 『レイ』って、あの?


 なにかたくらむような顔のケンが部屋の壁際へと移動する。




 聞いたことがないやわらかい声と、「紹介したいやつがいるんだ」、というジャンの声にあわせ、その人物が現れた。



 顔の半分近くまでマフラーに埋めた男がそれを外しながら、ちょっと驚いたような眼でザックをとらえ、続けてなにか嬉しいことがおこったような笑顔で「やあ」と挨拶した。


「えっと、コンチハ」

 予想外な雰囲気の相手に、なんともぎこちない言葉で返してしまい、壁に背をつけたケンがいつもの倍ほど、にやにやとした顔で見てくる。



 ジャンが手にした紙袋を掲げ、「つまみが増えた」とキッチンのカウンターにそれを置くと、いい匂いがあたりに漂う。来月の新作の試作品だよ、とマフラーをとる男が、ザックに言った。


「―― この前はせっかくお店に来てくれたのに、会えなくて残念だったよ」


 せっかく大人の社交辞令のような言葉を口にしたのに、ソファに置いたマフラーとコートを玄関のハンガーに掛けるようジャンにいわれると、あたふたと親に注意たされた子どものように、部屋をでて行く様子がおかしい。


 戻ってきた相手をじっくり観察。



 艶のある長めの茶色の髪は整髪料でしっかりと後ろに流してある。まっすぐな鼻筋に形のいい唇。左右対称の整った顔。明るくてきれいな金茶の瞳。かなりの『美形』。 男なのに美しい顔で分類されるタイプ。

 全体に清潔感漂う立ち姿や優雅な動作で、どこかの上流ブランドの広告にでていても不思議はないなと思う。 ピアスや髭はなく、肌はつるりとした印象で、背がないぶん、ケンとは違う意味で実年齢より低く幼くみえるタイプだろう。

 

 でも、・・・なんていうんだっけ?中性的?っつうか、つくりものっていうか、・・・


 その印象をたどれば、ずっと昔にみた、有名な聖堂教会の天井に描かれた宗教画の中にいたな、と思い出す。


 こちらの目線に頭がくる身長で、線も細いし自分のまわりにいる人間たちに比べ、体に厚みがないぶんよけいに小さくみえるが、姿勢もよく、動きから、それなりの筋力はあると判断。

 仕立てのよいスーツとみがきあげた靴を身につけ、身のこなしが落ち着き、たしかにあの店にいてもおかしくはないが、実年齢は自分とそう変わらないとザックは思う。




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